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運営管理者 みのる防災総合事務所
代表 森 実成

建設業BCP認定

今回の記事

建設業BCP認定の全国的な状況とは?地方整備局ごとの制度と取得方法を整理
建設業BCPについて調べると、
「建設業BCP認定を取得すると入札で評価される」
「地方整備局から認定証が交付される」
「災害対応力のある建設会社として公表される」
といった説明が多く見つかります。
しかし、ここで注意したいのが、建設業BCP認定は、全国どこでも同じ制度ではないという点です。
建設業BCPの基本的な考え方は全国共通です。
一方で、実際の認定制度は、地方整備局や地域によって異なります。
この記事では、建設業BCP認定の全国的な状況を整理しながら、
-
建設業BCP認定とは何か
-
全国共通の制度なのか
-
どのような会社が取得しているのか
-
建設会社は自社でBCPを作っているのか
-
コンサルタントに依頼しているのか
-
作成を支援する教材や資料はあるのか
という疑問について考えます。
建設業BCP認定とは?
建設業BCP認定とは、災害が発生した場合でも、建設会社が一定の災害対応力と事業継続力を確保していることを、地方整備局などが評価する制度です。
地域の建設会社は、地震、台風、豪雨などが発生した際に、
-
道路啓開
-
河川や道路の応急復旧
-
土砂やがれきの撤去
-
被害状況の確認
-
重機や資機材の提供
-
行政からの緊急要請への対応
などを担います。
そのため建設業BCPでは、一般企業のBCPとは少し異なり、
「自社の事業をどう再開するか」
だけではなく、
「災害時に地域の復旧活動へどのように参加するか」
という視点が重要になります。
関東地方整備局では、BCPという文書の有無だけではなく、災害時に業務を継続するための体制、対応拠点、連絡方法、目標時間などを含む「基礎的な事業継続力」を評価しています。
つまり、分厚い計画書を作れば認定されるという制度ではありません。
災害が発生したとき、実際に会社が動ける状態になっているかが確認されます。
建設業BCP認定は全国共通の制度ではない
建設業BCP認定を理解するうえで、最も重要なのがこの点です。
建設業BCP認定は、国土交通省本省が全国の建設会社を一つの基準で審査する、完全に統一された制度ではありません。
地方整備局などが、それぞれ制度を設けています。
例えば、関東地方整備局では「建設会社における災害時の事業継続力認定」が行われています。
中部地方整備局では、管内の災害対応を円滑にし、地域防災力を向上させることを目的として、2020年度に認定制度が創設されました。現在は年2回の申請期間が設けられています。
近畿地方整備局では「災害時建設業事業継続力認定制度」が運用され、申込要領、Q&A、作成例、講習会資料などが公開されています。
中国地方整備局では、2012年から「中国地方における地域建設業の事業継続計画認定制度」が行われています。さらに、2024年度からは入門クラスも設けられました。
東北地方整備局でも、少なくとも港湾空港関係において、災害時建設業事業継続力認定制度が運用されています。
このように、同じ「建設業BCP認定」と呼ばれていても、
-
認定制度の名称
-
対象となる建設会社
-
対象工事
-
申請時期
-
提出書類
-
認定期間
-
更新方法
-
評価項目
-
講習会の有無
-
入札や総合評価での扱い
などが地域によって異なる場合があります。
したがって、建設会社が認定取得を目指す場合は、まず自社の所在地や受注している工事に関係する認定制度を確認する必要があります。
全国共通なのは「制度」ではなくBCPの基本部分
認定制度には地域差がありますが、建設業BCPで確認される基本的な項目には共通点があります。
代表的な項目は、次のようなものです。
-
災害対策本部の設置
-
指揮命令系統
-
経営者が不在の場合の代行順位
-
社員の安否確認
-
参集可能な社員の把握
-
本社が使えない場合の代替拠点
-
電話が使えない場合の通信手段
-
重機、車両、資機材の把握
-
燃料の確保
-
協力会社との連絡体制
-
施工中現場の被害確認
-
行政や発注者との連絡
-
災害対応訓練
-
BCPの点検と見直し
関東地方整備局が公開している申請資料でも、災害時の対応体制だけではなく、体制が整うまでの目標時間や、その体制が実効的かどうかが確認されます。
つまり、地域ごとに様式は違っても、会社として整理しなければならない情報には、多くの共通部分があります。
建設業BCPを全国的に考える場合は、
「全国共通のBCP部分」
と、
「地域別の認定申請部分」
を分けて考える必要があります。
建設会社は自社でBCPを作っているのか?
建設業BCP認定を取得した企業が、自社だけで計画を作成したのか、それともコンサルタントへ依頼したのか。
この割合を示す全国的な公的統計は、現在のところ確認できません。
ただし、公開されている支援体制を見ると、多くの地域では、
「行政や建設業協会の資料・講習会を利用し、建設会社が自社で作成する」
という形が基本になっていると考えられます。
近畿地方整備局では、認定制度の概要やBCPの作成方法を説明するWEB講習会が開催され、講習会資料、事業継続計画書の作成例、Q&Aなども公開されています。
全国建設業協会も、地域建設業向けに「災害時事業継続の手引き」を公開しています。簡易版の作成例もあり、会員向けにはWord形式の資料も提供されています。
このことから、建設業BCP認定は、必ず専門コンサルタントへ依頼しなければ取得できない制度ではありません。
一定の社内体制と時間があれば、自社で作成することも可能です。
大手建設会社と地域建設会社では作り方が違う
大手・中堅建設会社の場合は、
-
総務部門
-
安全部門
-
品質管理部門
-
情報システム部門
-
経営企画部門
-
各支店や作業所
などが連携し、自社でBCPを構築できる場合があります。
一方、地域の中小建設会社では、
-
BCPの専任担当者がいない
-
総務担当者が経理や労務も兼務している
-
現場の情報が現場代理人や職長に分散している
-
重機や資機材の情報が一覧になっていない
-
協力会社の緊急連絡先が整理されていない
-
社員の参集時間を計算していない
-
災害対応訓練の実施方法が分からない
といった問題が起きやすくなります。
行政の資料を読めば制度の内容は分かります。
しかし、
「自社の場合は、何を書けばよいのか」
という段階で止まる会社も少なくないと考えられます。
自社作成はできても、社内調整が難しい
建設業BCPの作成が難しい理由は、文章を書くことだけではありません。
例えば、参集計画を作るためには、
-
社員はどこに住んでいるか
-
地震発生後に道路を使えるか
-
津波や土砂災害の危険区域を通らないか
-
誰が本社へ参集するのか
-
誰が現場を確認するのか
-
誰が行政との連絡を担当するのか
を整理する必要があります。
災害対策本部を決める場合にも、
「社長が本部長」
と書くだけでは不十分です。
社長と連絡が取れない場合の代行者や、経営判断、現場対応、社員対応、情報収集などの役割分担も必要です。
さらに、建設会社では、本社だけではなく複数の施工中現場が存在します。
災害発生時には、
-
社員の安全確認
-
施工中現場の安全確認
-
発注者への連絡
-
協力会社への連絡
-
地域の応急復旧活動
が同時に発生する可能性があります。
この社内調整が、建設業BCP作成の本当の難しさです。
コンサルタントへ依頼する会社もある
建設業BCP認定の申請を支援する民間事業者も存在します。
地方整備局ごとの申請資料や、新規・継続申請の支援を提供している専門事業者も確認できます。
コンサルタントを利用するメリットは、
-
制度を調べる時間を減らせる
-
必要な資料を整理してもらえる
-
申請書の記載漏れを防ぎやすい
-
社内ヒアリングを進めてもらえる
-
申請書全体の整合性を確認してもらえる
ことです。
一方で、すべてを外部へ任せてしまうと、認定取得後に、
-
社員がBCPの内容を知らない
-
担当者が変更されると分からなくなる
-
訓練ができない
-
更新時に再び外部へ依頼しなければならない
-
計画書と実際の会社組織が一致しない
という問題も起こり得ます。
建設業BCPは、申請書を提出して終わるものではありません。
災害時に実際に使う計画である以上、会社自身が内容を理解しておく必要があります。
建設業BCPを支援する教材はあるのか?
建設業BCPの作成を支援する資料は存在します。
主なものは、次の3種類です。
地方整備局の申請資料
各地方整備局では、
-
申込要領
-
評価要領
-
Q&A
-
申請様式
-
計画書の作成例
-
講習会資料
などが公開されています。
認定申請を行う場合、まず確認しなければならない公式資料です。
建設業団体の手引き
全国建設業協会は、地域建設業向けの「災害時事業継続の手引き」と、簡易版の作成例を公開しています。
建設業BCPの基本を理解し、自社の計画を考えるうえで重要な資料です。
継続・訓練のための資料
関東地方整備局では、認定を受けた建設会社がBCP訓練を実施するためのマニュアルも公開されています。
このマニュアルでは、訓練を通じてBCPを検証し、見直しを行い、組織や社員の危機対応能力を高めることが示されています。
建設業BCP認定は、新規取得だけでなく、取得後の訓練と改善も重要になっています。
無料資料があっても、計画が完成するとは限らない
行政や建設業団体の資料は、制度を正確に理解するうえで不可欠です。
ただし、資料をダウンロードしただけで、自社のBCPが完成するわけではありません。
建設会社の担当者は、資料を読みながら、
-
社長に何を確認するのか
-
現場代理人から何を聞くのか
-
社員の参集情報をどう集めるのか
-
重機や資機材をどのように一覧化するのか
-
協力会社をどこまで計画に含めるのか
-
代替拠点をどこにするのか
-
訓練をどう実施するのか
を自分たちで考える必要があります。
現在公開されている資料は、
「何を決める必要があるか」
は示しています。
しかし、
「社内の誰に、何を、どの順番で聞けば完成するのか」
まで一体的に支援するものは多くありません。
ここに、建設業BCP支援の空白があります。
建設業BCP認定は取得後の更新が重要
建設業BCP認定では、認定証を一度取得すれば永久に有効というわけではありません。
制度に応じて、一定期間後に更新や継続申請が必要になります。
更新までの間には、
-
社員の入退社
-
役員や組織の変更
-
本社や営業所の移転
-
重機や車両の入れ替え
-
協力会社の変更
-
新しい工事の受注
-
連絡方法の変更
などが発生します。
そのため、当初作成したBCPを放置すると、計画書と実際の会社の状態が一致しなくなります。
関東地方整備局が継続申請向けの訓練マニュアルを公開していることからも、認定取得後の訓練、検証、見直しが制度上重要であることが分かります。
つまり、建設業BCPには、
「新規認定を取得するための支援」
だけでなく、
「認定を維持し、更新するための支援」
にも需要があります。
建設業BCPの全国的な状況をどう考えるべきか
全国的な状況を整理すると、建設業BCPには、次の特徴があります。
第一に、建設業BCPの基本項目は全国的に共通しています。
第二に、認定制度の名称、対象、様式、審査方法などには地域差があります。
第三に、行政や建設業団体から無料の手引きや作成例が公開されています。
第四に、多くの会社は無料資料や講習会を利用して、自社で作成することが想定されています。
第五に、専任担当者がいない中小建設会社では、社内情報の収集や調整が大きな負担になります。
第六に、コンサルタントによる申請支援は存在しますが、認定取得後の運用を会社自身が理解していなければ、BCPが形骸化する可能性があります。
第七に、新規申請だけでなく、訓練、改善、継続申請、更新を支援する仕組みが必要です。
全国対応には「共通部分」と「地域別部分」の分離が必要
建設業BCPを全国向けに支援する場合、一つの様式を全国で使うことは難しいと考えられます。
そこで必要になるのが、
「全国共通部分」
と、
「地域別認定部分」
を分ける考え方です。
全国共通部分では、
-
災害対応組織
-
指揮命令
-
安否確認
-
参集計画
-
代替拠点
-
通信手段
-
重機・資機材
-
協力会社
-
施工中現場
-
訓練
-
改善
を整理します。
そのうえで地域別部分として、
-
対象企業
-
申請時期
-
認定期間
-
申請様式
-
評価項目
-
必要な添付資料
-
継続申請
-
地域独自の条件
を確認します。
この構造にすれば、建設業BCPの基本部分を会社内で共有しながら、各地域の認定申請にも対応しやすくなります。
まとめ:建設業BCPは全国共通であり、全国一律ではない
建設業BCPでは、人命の安全、指揮命令、安否確認、参集、通信、重機・資機材、協力会社、訓練といった基本部分は全国共通です。
しかし、認定制度は全国一律ではありません。
地方整備局や地域によって、
-
制度の名称
-
対象企業
-
申請書類
-
評価方法
-
認定期間
-
更新方法
などが異なります。
また、公式資料や作成例は公開されていますが、それを自社の組織、社員、現場、重機、協力会社へ落とし込む作業は、建設会社自身が行わなければなりません。
建設業BCP認定の取得を考える場合は、最初から申請様式へ記入するのではなく、
1.自社が対象となる認定制度を確認する
2.全国共通となるBCPの基本体制を整理する
3.自社の社員・現場・資機材情報を集める
4.地域別の申請様式へ落とし込む
5.訓練によって内容を検証する
6.更新に向けて継続的に見直す
という順番で進めることが重要です。
建設業BCPは、認定証を取得するためだけの書類ではありません。
災害が発生したとき、会社と社員を守り、地域の復旧活動へ参加するための経営計画です。
建設業BCP認定シリーズ|次の10記事案
1.地方整備局別の制度一覧
建設業BCP認定制度を地方整備局別に比較|対象企業・認定期間・申請方法の違い
親記事から最も自然につながる記事です。
比較する項目は、
- 制度名
- 対象地域
- 対象企業
- 新規申請時期
- 認定期間
- 更新方法
- 主な評価項目
- 講習会の有無
- 入札評価との関係
です。
これはシリーズ全体の「一覧ページ」
2.取得するメリット
建設業BCP認定を取得するメリットとは?入札評価・企業信用・災害協定との関係
検索者は、最初に「取る意味があるのか」を知りたいはずです。
ただし、全国一律で入札加点されると断定せず、
発注機関や地域、工事の評価方式によって扱いが異なる
と整理する記事
3.自社作成かコンサルか
建設業BCPは自社で作れる?コンサルへ依頼する場合との違い・費用・選び方
今回の市場調査で出てきたテーマです。
- 完全自社作成
- 講習会を利用した自社作成
- 教材・雛形を利用した作成
- 添削付き支援
- コンサルへの全面依頼
を比較します。
4.必要書類と申請の流れ
建設業BCP認定の申請方法|必要書類・作成手順・認定までの流れを解説
制度ごとの差はありますが、一般的な流れとして、
- 対象制度の確認
- 申請要領の確認
- 社内情報の収集
- BCP作成
- 添付資料の準備
- 申請
- 審査・修正
- 認定
を整理します。
5.認定審査で見られる項目
建設業BCP認定では何を審査される?全国に共通する評価項目を整理
全国共通部分を深掘りします。
- 災害対応組織
- 代理順位
- 安否確認
- 参集
- 代替拠点
- 通信手段
- 重機・車両・資機材
- 協力会社
- 施工中現場
- 訓練
- 見直し
6.作成で止まりやすいポイント
建設業BCPが作れない理由とは?中小建設会社が申請途中で止まる10のポイント
これは、かなりおもしろい記事になります(笑)
例えば、
- 社長しか判断できない
- 社員の住所情報が集まらない
- 参集時間が分からない
- 代替拠点が決まらない
- 衛星電話など高価な通信機器が必要だと思っている
- 重機台帳が更新されていない
- 協力会社に確認していない
- 施工中現場の扱いが曖昧
- 訓練実績がない
- 書類同士の内容が矛盾する
という実務上の詰まり方を整理します。
7.参集計画の作り方
建設業BCPの参集計画とは?社員の参集基準・時間・役割分担の作り方
建設業BCPで重要であり、教材化しやすいテーマです。
単に社員全員が会社へ集まるのではなく、
- 本社へ参集する人
- 現場を確認する人
- 自宅待機する人
- 地域対応へ向かう人
- 連絡が取れない場合の判断
を分けて考えます。
8.災害時組織の作り方
建設業BCPの災害対策本部はどう作る?社長・現場代理人・安全担当者の役割
今進めている「組織の見直し」ともつながります。
- 社長
- 本部長代行
- 総務・情報担当
- 現場確認担当
- 資機材担当
- 協力会社連絡担当
- 発注者・行政連絡担当
- 防火・防災管理者との接続
を整理します。
9.認定取得後の訓練
建設業BCP認定後に必要な訓練とは?安否確認・参集・通信訓練の実施例
取得後に何をすればよいか、分からない会社向けです。
- 安否確認訓練
- 緊急連絡網訓練
- 災害対策本部立ち上げ訓練
- 参集判断訓練
- 現場被害確認訓練
- 発注者・協力会社との通信訓練
- 重機・資機材確認訓練
を紹介します。
10.更新・継続申請
建設業BCP認定の更新方法|継続申請までに見直す項目と訓練記録の残し方
新規認定よりも、将来的には更新市場の方が大きくなる可能性があります。
- 認定期限の確認
- 組織変更
- 社員名簿
- 緊急連絡網
- 重機・車両台帳
- 協力会社情報
- 施工中現場
- 訓練実績
- 改善履歴
- 添付資料
を整理します。
