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香川県で南海トラフ巨大地震が起きたら交通はどうなる? JR・ことでん・道路停止と津波避難を県被害想定から考える ― 南海トラフ巨大地震シナリオ分析シリーズ 2026.8.9更新

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南海トラフ巨大地震シナリオ分析シリーズ

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 今回の記事

JR・ことでん・道路停止と津波避難を県被害想定から考える

JR・ことでん・道路停止と津波避難を県被害想定から考える

香川県で南海トラフ巨大地震が起きたら交通はどうなる?

JR・ことでん・道路停止と津波避難を県被害想定から考える

― 南海トラフ巨大地震シナリオ分析シリーズ

南海トラフ巨大地震について調べると、

「香川県には津波が何分後に来るのか」
「どこまで浸水するのか」
「どこへ避難すればよいのか」

といった情報が多く出てきます。

もちろん、どれも重要な情報です。

しかし、実際に巨大地震が発生したとき、私たちはその避難先まで平常時と同じように移動できるのでしょうか。

JRは動いているのか。

ことでんは動いているのか。

家族を車で迎えに行けるのか。

そして、香川県を東西に結ぶ重要な幹線道路である国道11号は、本当に走れるのか。

今回から始める「南海トラフ巨大地震シナリオ分析シリーズ」では、単に被害想定の数字を紹介するのではなく、

県想定 × 交通機関の計画 × 実災害データ → シナリオ分析

という方法で、

もし、その想定が本当に起きたら、香川県では何が起こるのか。

を考えていきます。


なぜ「香川県の被害想定」を基準にするのか

南海トラフ巨大地震については、国の被害想定と各都道府県が作成する被害想定があります。

国の想定は、南海トラフ巨大地震という広域災害を全国的な視点から把握するうえで非常に重要です。

一方、香川県内で実際にどのような被害が起こる可能性があるのかを見る場合には、県内の地盤、建物、人口、液状化、津波浸水など、地域条件をより細かく反映した香川県の被害想定を見る必要があります。

香川県は2025年に地震・津波被害想定を見直しました。最大クラスの南海トラフ地震では、香川県で揺れが最大となる「陸側ケース」を強震モデルとして採用し、津波についても国が示した複数ケースから香川県への影響を踏まえて設定しています。

このシリーズでは、この香川県の最新想定を基本条件として考えます。

ただし、県自身も「実際の地震が想定どおりになるとは限らない」と注意しています。したがって、この記事も未来を予言するものではありません。

あくまで、

現在公開されている被害想定から、起こり得る問題を事前に考えるためのシナリオ分析です。


香川県では発災直後、約27万6千人が避難する想定

まず、この数字から考えてみます。

香川県の最新被害想定では、南海トラフ最大クラスの場合、発災直後の避難者は約27万6千人と推計されています。

27万6千人。

この人たちが全員同じ場所へ避難するわけではありません。

避難所へ行く人。

自宅から離れる人。

徒歩で移動する人。

車で移動しようとする人。

家族を迎えに行こうとする人。

津波浸水区域から高い場所へ避難する人。

会社から帰宅しようとする人。

様々な動きが同時に発生します。

ここで重要なのは、

27万6千人が避難する災害で、交通だけが平常どおり動いているとは考えにくい。

ということです。


「冬18時」に南海トラフ巨大地震が起きたら

今回は一つの条件を置いて考えてみます。

冬の18時。

会社から帰宅する人が増え、道路には多くの車が走り、JRやことでんにも通勤・通学客がいる時間帯です。

この状態で南海トラフ巨大地震が発生したとします。


18時00分――地震発生

強い揺れが香川県を襲います。

まず起こる可能性が高いのが、

鉄道の停止です。

JR四国では、緊急地震速報を活用した「早期地震警報システム」を導入しており、強い揺れが予想される区間を走行する列車に、自動的に緊急停車を指示する仕組みがあります。

つまり、大地震が発生した直後、

「電車で急いで家へ帰ろう」

という行動そのものが成立しなくなる可能性があります。

これは鉄道会社の対応が悪いからではありません。

乗客を守るために止めるのです。


津波が想定されれば、JRでは「列車から避難」もあり得る

さらにJR四国では、自治体のハザードマップを基に津波浸水が予想される線路区間を把握し、避難出口や指定避難場所への経路を示す標識を設置しています。

浸水想定区域を走行している列車についても、運転士が確認できる仕組みがあります。

つまり南海トラフ巨大地震では、

駅まで列車で運んでもらう

とは限りません。

状況によっては、

途中で列車が停止し、乗客が列車から降りて安全な場所へ避難する

という事態まで考えておく必要があります。


ことでんも「そのまま走り続ける」とは考えない

ことでんについても同様です。

ことでんは2025年3月25日、南海トラフ地震とそれに伴う津波によって列車が緊急停止した状況を想定し、乗客の避難誘導訓練を実施しています。

また、緊急地震速報装置で「震度5弱を受信した」と想定した情報伝達訓練も行っています。

ここでも重要なのは、

「南海トラフが発生したらことでん全線が必ず長期間止まる」

と断定することではありません。

実際の運行判断は地震の規模、線路や施設の状況、津波情報などによって変わります。

しかし少なくとも、

巨大地震発生後もJR・ことでんが平常時と同じ輸送力を維持し続ける。

という前提で避難計画を考えるのは危険です。


県想定では「鉄道約500か所被害」

さらに香川県の被害想定には、かなり重い数字があります。

南海トラフ最大クラスの場合、

鉄道施設の被害箇所は約500か所。

さらに、

緊急輸送道路の被害箇所は約110か所。

と推計されています。

もちろん「500か所被害」という数字が、そのまま500か所で線路が完全に寸断されるという意味ではありません。

しかし、

強い揺れ
施設被害
線路点検
橋梁点検
電気設備確認
津波浸水
液状化

などが重なれば、鉄道の再開には安全確認が必要になります。

つまり、地震直後に鉄道利用者が道路側へ流れ出す可能性を考えておかなければなりません。


JRとことでんが止まった。その人たちはどこへ行く?

ここからが今回のシナリオ分析の核心です。

鉄道が止まる。

すると、

「歩いて帰ろう」

「家族に迎えに来てもらおう」

「車を取りに行こう」

「バスに乗ろう」

という人が出てきます。

しかし道路側も平常状態ではありません。

しかも18時です。

もともとの帰宅車両に加えて、

鉄道停止による代替移動、会社からの帰宅、学校への迎え、介護施設への迎え、津波避難、避難所への移動、消防・救急・警察・道路啓開車両

が同じ道路網へ流れ込む可能性があります。

そして、その中心の一つになるのが、

国道11号です。


国道11号は「みんなが帰る道路」ではなくなる

国道11号は香川県を東西に結ぶ重要路線です。

平常時なら、

「ことでんが止まったら車で」

「JRが止まったら国道で」

と思うかもしれません。

しかし災害時の国道11号には、別の重要な役割があります。

香川県道路啓開計画では、国道11号などを第1次啓開ルートに位置付け、概ね24時間以内の啓開を目標としています。

つまり国道11号は、

救急。

消防。

警察。

災害対応部隊。

道路啓開。

物資輸送。

医療搬送。

こうした命を守る交通を支える道路になるのです。


県は「立ち往生車両」まで想定している

香川県道路啓開計画を見ると、南海トラフ最大クラスで想定される道路被害として、

津波浸水、橋梁被害、落石、自然斜面崩壊、盛土法面崩壊、沿道施設崩壊だけでなく、「立ち往生車両と放置車両」まで挙げています。

これは非常に重要だと思います。

道路災害というと、

「道路が壊れる」

ことだけを想像しがちです。

しかし巨大災害では、

壊れていない道路まで車で埋まれば、道路は機能しなくなります。


国道11号は完全に停止するのか?

ここは慎重に考える必要があります。

香川県の被害想定には、

「国道11号が全線完全停止する」

とは書かれていません。

したがって、そう断定することはできません。

しかし、

道路損傷
橋梁点検
信号停止
津波浸水
液状化
帰宅車両
迎えの車
津波避難車両
鉄道停止による代替交通
緊急車両
道路啓開車両
交通規制

が同時に発生したと考えると、

国道11号の一部区間で、一般車両の移動手段として実質的に機能しない状態になる可能性

は十分に考えておく必要があります。

私はこれを単なる「渋滞」と考えない方がいいと思います。

これは、

災害時に急増した交通需要が、残された道路容量を超えてしまう状態

だからです。


「24時間以内に道路啓開」=普通に走れる、ではない

もう一つ、非常に重要な点があります。

香川県は国道11号などの第1次啓開ルートについて、概ね24時間以内の啓開を目標としています。

しかし、

道路啓開=一般車両が普通に走れる状態へ戻す

という意味ではありません。

道路啓開計画では、当面、

緊急車両の通行に必要な最低限の幅員5.5mを確保する

ことを目標としています。

それが難しい場合には、1車線と待避所で対応することも想定されています。また必要に応じて交通規制も実施されます。

つまり、

道路が開いた=私たちが自由に車で移動できる

ではありません。

発災直後の国道11号は、生活道路というより、

救命・救援・復旧活動のための道路

として使われる可能性があります。


令和8年熊本地震では「鉄道と道路」が同時に止まった

このシナリオを考えるうえで重要な実災害データが、令和8年熊本地震です。

7月28日16時27分の地震発生後、翌29日午前4時時点では、高速道路で2路線13区間が被災によって通行止めとなりました。

道路損壊や橋梁損傷が発生し、一般道の交通混雑を避ける目的で緊急車両のみ通行可能とされた区間もありました。

同じ時点で鉄道も大きな影響を受けています。

九州新幹線は全線運転見合わせ。

在来線も8事業者12路線が運転見合わせとなりました。

つまり実際の大地震では、

鉄道だけが止まるわけではない。

道路だけが止まるわけでもない。

複数の交通手段が同時に機能低下することが現実に起きています。

南海トラフ巨大地震では、これにさらに広範囲の津波避難が加わります。


発災10分後の香川県を想像してみる

ここからは、県想定、交通機関の計画、熊本地震の実災害データを重ねたシナリオ上の考察です。

18時00分。

巨大地震発生。

JRの列車が停止する。

ことでんも安全確保のため運行に大きな制約が生じる。

道路では信号や道路施設への被害確認が始まる。

沿岸地域では津波避難が始まる。

駅には帰宅できない人が増える。

会社員が徒歩や車で帰ろうとする。

子どものところへ親が向かう。

高齢者を迎えに行こうとする家族もいる。

そして多くの人が、

「車なら動ける」

と考える。

その車が国道11号や国道30号、国道32号、主要県道へ流れ込む。

ところが一つの橋が通行規制になる。

一つの交差点で信号が止まる。

一つの場所で道路が損傷する。

一台の車が動けなくなる。

すると、その影響はその場所だけでは終わりません。

後方へ渋滞が伸び、

別の道路へ車が流れ、

さらに別の交差点が詰まる。

災害時の交通障害は連鎖します。


「津波まで時間がある」は「その時間ずっと移動できる」ではない

ここが今回の記事で最も重要なポイントかもしれません。

香川県では、太平洋側の地域と比較すると、外洋からの津波が到達するまで一定の時間がある地域があります。

しかし県の新しい津波想定では、地震による地盤沈降や堤防の沈下・破壊を想定しており、場所によっては外洋からの津波到達前から浸水が始まる可能性も示されています。

さらに交通を考えると、

津波到達まで60分ある=60分間自由に車で移動できる

ではありません。

地震が発生した瞬間から、

鉄道停止。

道路点検。

信号障害。

道路損傷。

帰宅者。

迎えの車。

津波避難。

が始まる可能性があります。

つまり、

「津波が来る時間」と「自分が自由に移動できる時間」は別物です。


家族を「迎えに行く」が危険になるかもしれない

これは家族防災でも非常に重要です。

大地震が起きた。

子どもは学校。

親は職場。

高齢者はデイサービス。

当然、

「迎えに行かなければ」

と思います。

しかし、多くの家庭が同じ行動を取ったらどうなるでしょう。

迎えの車が道路へ集中します。

その道路を、

津波から逃げる人。

救急車。

消防車。

警察車両。

道路啓開車両。

物資輸送車両。

も使います。

だから家族防災会議では、

「誰が迎えに行くか」だけを決めるのでは足りません。

むしろ、

迎えに行けない場合、どうするのか。

を決めておく必要があります。

学校で待つ。

職場で待つ。

施設で待つ。

徒歩で安全な場所へ避難する。

何時間かは動かない。

家族それぞれが、自分のいる場所で安全を確保できるようにしておく。

これも南海トラフ巨大地震への備えです。


企業BCPでも「全員帰宅」が正解とは限らない

同じことは企業にも言えます。

地震が起きたら、

「社員をすぐ家へ帰す」

というルールだけでは危険な場合があります。

冬18時。

鉄道停止。

道路混雑。

津波避難。

その状態で一斉帰宅させれば、従業員をさらに危険な交通環境へ送り出す可能性があります。

企業側には、

帰宅させる判断だけでなく、「帰宅させない判断」

も必要になります。

そのためには、

水。

食料。

トイレ。

照明。

通信。

毛布。

家族との安否確認手段。

そして、

いつまで会社に留まるのかという判断基準

まで準備しておく必要があります。

これは、BCP以前の初動対応として非常に重要です。


南海トラフ巨大地震は「津波の高さ」だけでは見えてこない

南海トラフ巨大地震を考えるとき、

震度。

津波高。

浸水深。

津波到達時間。

もちろん全部重要です。

しかし、それだけでは、

その瞬間、街で何が起こるのか

までは見えてきません。

香川県の最新想定では、

発災直後の避難者約27万6千人。

緊急輸送道路の被害約110か所。

鉄道被害約500か所。

これを別々の数字として読むのではなく、

同じ時間に起こる一つの災害として重ねてみる。

すると、

JRが止まる。

ことでんが止まる。

道路にも被害が出る。

避難者が動く。

車が集中する。

その道路を緊急車両も使う。

という別の景色が見えてきます。


南海トラフ巨大地震で考えるべきは「どこへ行くか」だけではない

避難計画では、

どこへ逃げるか

を考えます。

しかし巨大地震では、もう一つ必要です。

移動できなくなったら、どうするか。

JRが止まったら。

ことでんが止まったら。

国道11号が動かなかったら。

家族を迎えに行けなかったら。

会社から帰れなかったら。

そこで初めて、

本当に使える避難計画になります。

南海トラフ巨大地震への備えでは、

「車があれば逃げられる」
「電車が止まったら迎えに行けばいい」
「津波までまだ時間がある」

という平常時の前提を、一度外して考えてみる必要があります。

交通が止まった状態でも、自分と家族は安全を確保できるか。

南海トラフ巨大地震シナリオ分析シリーズでは、こうした「想定の数字の先にある現実」を、香川県の被害想定から一つずつ考えていきます。


南海トラフ巨大地震シナリオ分析シリーズ

今回の第1回は、

交通停止 × 津波避難

を考えました。

このシリーズでは今後、同じ方法、

香川県の被害想定 × 公的計画 × 実災害データ → シナリオ分析

を使って、

「避難所はどうなるのか」
「断水したら生活はどうなるのか」
「停電・通信障害が同時に起きたらどうなるのか」
「車中泊・在宅避難はどうなるのか」
「企業や介護施設はどう動くのか」

と、実際に南海トラフ巨大地震が発生した香川県を時間軸で考えていきます。


 

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特に、津波浸水想定や津波到達時間は、避難判断に直結します。

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――避難所の備蓄は、本当に足りるのか?

 


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