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2026年、防災士は「個人の資格」から「組織の備え」へ
香川銀行・徳島大正銀行の動きから考える、これからの防災士資格
防災士という資格は、これまでどちらかといえば、
「地域で活動する人」
「自治会や消防団、防災に関心のある人」
「家庭や地域の備えを学びたい人」
が取得する資格として見られることが多かったかもしれません。
しかし、2026年に入り、少し流れが変わってきたように感じます。
その象徴的な動きが、
トモニホールディングスグループによる防災士資格取得の取り組みです。
トモニホールディングスグループは、徳島大正銀行と香川銀行において、防災士資格の取得を進めることを発表しました。これは第6次経営計画のサステナビリティ戦略の一環であり、地域やお客さまの課題解決、防災力強化を目的とした取り組みです。
私は以前から、防災士の記事の中で、
家族に一人は防災士を。
会社に一人は防災士を。
という考え方を書いてきました。
今回の動きは、まさにその考え方が、
個人の理想論ではなく、
企業や地域金融機関の実務として動き始めた事例だと思います。
防災士は「災害に詳しい人」では終わらない
防災士とは、単に災害の知識を持っている人ではありません。
日本防災士機構では、防災士について、
自助・共助・協働を原則として、社会のさまざまな場で防災力を高める活動が期待される人材と説明しています。
つまり、防災士の役割は、
自分の命を守ること
家族を守ること
地域で助け合うこと
職場で被害拡大を防ぐこと
行政や企業、防災機関と協力すること
にあります。
ここで大切なのは、
防災士は「ひとりで何でも解決する人」ではないということです。
むしろ、災害時に必要なのは、
完璧な知識を持った一人ではなく、
防災の共通言語を持つ人が、家庭・会社・地域にいることです。
なぜ銀行が防災士を取得するのか?
今回、特に注目したいのは、
防災士資格の取得を進めているのが、地域金融機関であるという点です。
災害が起きたとき、止まって困るのは道路や電気だけではありません。
お金の流れ。
決済。
融資。
事業再建。
生活再建。
地域経済の復旧。
これらも、災害後の地域を支える重要な機能です。
トモニホールディングスグループの発表でも、地域銀行には、金融面から決済機能の維持や復興支援を通じた地域貢献が求められると説明されています。
これは、非常に重要な視点です。
防災は、避難所や非常食だけの話ではありません。
災害後に、
会社をどう再開するのか。
生活資金をどう確保するのか。
地域経済をどう止めないのか。
復旧資金をどう回すのか。
ここまで考えると、防災士の役割は、
地域活動だけではなく、
企業防災・事業継続・地域経済のレジリエンスにもつながっていきます。
2026年の動きは「会社に一人は防災士」の実例になる
徳島大正銀行では、役員・支店長を含むすべての管理監督者を対象に、防災士資格者の養成を行う方針が示されています。さらに、役員・本部部長・支店長等を優先し、令和8年8月までに全ての役員、本部・営業店の責任者が資格を取得する予定とされています。
香川銀行でも、本部関連4部署の防災担当者を対象に、2026年7月に防災士資格取得に向けた研修等を実施する予定であり、その後、資格取得者による支店長向け周知会も予定されています。
ここで見えてくるのは、
防災士を「趣味の資格」として扱っていないことです。
管理者。
責任者。
防災担当者。
支店長。
本部部署。
つまり、組織の中で判断する立場の人が、
防災の基礎知識を持つことを重視しているのです。
これは、企業防災として非常に理にかなっています。
なぜなら、災害時に必要なのは、
知識だけではなく、
判断する人が防災を理解していることだからです。
資格を取るだけでは足りない。大事なのは「使う仕組み」
ただし、ここで注意したいことがあります。
防災士を取得したからといって、
その会社や家庭が自動的に安全になるわけではありません。
資格は入口です。
本当に大切なのは、その知識を使って、
避難ルートを確認する
備蓄を見直す
安否確認の方法を決める
停電時の対応を考える
家族や社員と話し合う
BCPや防災計画に反映する
訓練を行う
改善履歴を残す
ところまで進めることです。
資格を取って終わりではなく、
資格を取った人が、周囲を巻き込み、備えを動かすこと。
ここに、防災士の本当の価値があります。
家族に一人は防災士
私は、家庭にも防災士的な視点を持つ人が一人いるだけで、備え方は大きく変わると思っています。
たとえば、家族の中に一人でも、
ハザードマップを見る人
非常持出袋を点検する人
避難所の場所を確認する人
停電時のスマホ充電を考える人
高齢者や子どもの避難を考える人
薬やメガネ、持病の情報を整理する人
がいれば、家庭の防災力はかなり変わります。
これは、家族版の事業継続計画とも言えます。
会社にBCPがあるように、
家族にもFCP、つまり
Family Continuity Plan=家族生活継続計画
が必要になります。
災害は、避難して終わりではありません。
その後も、生活は続きます。
だからこそ、家族に一人、防災を考える人がいる意味は大きいのです。
会社に一人は防災士
会社の場合は、さらに重要です。
災害が起きたとき、会社には多くの判断が求められます。
社員を帰すのか。
待機させるのか。
営業を止めるのか。
取引先にどう連絡するのか。
燃料や資材は足りるのか。
通信が止まったらどうするのか。
支払い、入金、給与はどうするのか。
復旧を優先する業務は何か。
これは、単なる防災ではなく、
事業継続の問題です。
つまり、会社に防災士がいるということは、
「災害に詳しい社員がいる」という意味だけではありません。
災害時に、会社を止めないための会話ができる人がいる
ということです。
これが非常に大きいのです。
特に中小企業では、災害対応を専門部署だけで行うことは難しい場合があります。
だからこそ、まず一人。
防災士資格を持つ人、または防災士的な視点で社内を見られる人を置く。
そこから、会社の備えは変わり始めます。
2026年、防災士は「地域の資格」から「経営の基礎知識」へ
今回のトモニホールディングスグループの取り組みは、
防災士資格が、地域活動だけでなく、企業や組織の中でも重視され始めていることを示していると思います。
特に南海トラフ地震、線状降水帯、停電、通信障害、物流停止などを考えると、
防災はもはや「一部の担当者だけが知っていればよい知識」ではありません。
家庭にも必要。
地域にも必要。
会社にも必要。
管理者にも必要。
経営者にも必要。
2026年は、防災士という資格が、
「取って終わりの資格」ではなく、
家庭・地域・会社をつなぐ防災の共通言語として見直される年になるかもしれません。
家族に一人は防災士を。
会社に一人は防災士を。
これは、決して大げさな話ではありません。
むしろ、これからの災害多発時代において、
最初にできる、現実的で小さな一歩だと思います。
備えは、特別な人だけがするものではありません。
学んだ一人が、家族を変える。
学んだ一人が、職場を変える。
学んだ一人が、地域を変える。
防災士は、そのきっかけになる資格です。
まとめ
2026年、トモニホールディングスグループが防災士資格の取得を進める動きは、
防災士資格が「個人の学び」から「組織の備え」へ広がり始めた象徴的な事例だと思います。
防災士は、災害を止める資格ではありません。
しかし、災害時に、
何を見て、
何を判断し、
誰と連携し、
どう備えを続けるのか。
その入口をつくる資格です。
これからは、
家族に一人。
会社に一人。
地域に一人。
防災士的な視点を持つ人がいることが、
地域全体のレジリエンスを高める力になっていくはずです。

参考資料
・トモニホールディングスグループ「防災士資格の取得」による地域防災力強化への取組みについて
・香川銀行「防災士資格の取得」による地域防災力強化への取組みについて
・徳島大正銀行「防災士資格者の養成について」
・日本防災士機構「防災士とは」
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