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【情報提供者】
防災士・BCP・リスクマネジメントの研究発信
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代表 森 実成

暑さ寒さ対策(体育館避難の現実)|令和8年熊本地震から考える避難所と車中泊の1週間
この記事の役割(避難場所・避難生活)
災害が発生し、自宅の安全確認や初動対応を終えたあと、
「余震が続き、自宅では眠れない」
「停電と断水で生活を続けられない」
「家の損傷が大きく、ここにいる方が危険だ」
と判断すれば、避難所や親戚宅、車中泊場所などへ移動することになります。
しかし、避難所に着いたからといって、暑さや寒さから守られるとは限りません。
特に学校体育館は、多くの人を受け入れられる一方で、もともとは長期間生活するための施設ではありません。
このページでは、令和8年熊本地震で実際に起きていることを確認しながら、
- 国が担うこと
- 県・市町など行政が担うこと
- 自分と家族で準備すること
を分けて整理します。
そして、避難所候補の設備を調べた結果を、72時間以上の避難生活を支える防災リュックや追加装備へ反映する方法まで考えます。
香川レジリエンス防災ポータルでは、本記事を「避難場所・避難生活」の時間軸に位置付けています。
先に結論:避難所は「開いている」だけでは完成しない
避難所は、建物の扉が開き、人を収容できれば完成するわけではありません。
夏であれば、熱中症を防げること。
冬であれば、低体温症や床からの冷えを防げること。
さらに、
- 水が飲める
- トイレを使える
- 最低限眠れる
- 薬を継続できる
- スマートフォンを充電できる
- 体調が悪化した人を発見できる
という生活条件が必要です。
人が72時間以上、命と健康を守りながら生活できて、初めて避難所として機能する。
これが、体育館避難を考える出発点です。
体育館に行けば冷房があるとは限らない
文部科学省の2026年5月1日時点の調査では、公立小中学校の体育館・武道場における冷房設備の設置率は全国で31.7%、避難所指定校に限っても33.1%でした。
香川県は全体で27.5%、避難所指定校で28.0%。熊本県は全体で20.4%、避難所指定校で20.9%です。
つまり、香川県でも、避難所に指定された学校体育館のすべてに冷房があるわけではありません。
さらに、この統計の「冷房設備」には、スポットクーラーなど冷房機能を持つ設備も含まれます。設置済みとされていても、広い体育館全体を家庭の居間と同じように冷やせるとは限りません。
令和8年熊本地震の発生後、文部科学省は、体育館や武道場に空調設備がない学校も多いことから、冷房のある普通教室などを避難所として活用するよう通知しました。
この対応からも分かるのは、
指定避難所であることと、真夏に生活できる施設であることは同じではない。
という現実です。
以前から準備が求められていたこと
今回の熊本地震で、初めて体育館の暑さや車中泊の危険が分かったわけではありません。
国は以前から、避難所の生活環境、冷暖房、非常用電源、トイレ、在宅避難者や車中泊避難者への支援を、自治体が平時から検討するよう求めてきました。
内閣府の避難所関係ガイドラインでは、避難所内だけでなく、在宅避難者や車中泊避難者を含めて支援する考え方が示されています。支援を「避難所という場所」だけで考えず、避難している一人ひとりに届ける方向へ転換することが求められています。
文部科学省も、避難所となる学校体育館の空調整備を促進し、避難所指定校への冷暖房設置や断熱工事、電源確保を支援しています。国は2035年度までに、避難所などになる公立小中学校体育館の空調設置率を100%にする目標を掲げています。
制度もガイドラインも存在します。
それでも、実際の災害では空調のない体育館が使われ、冷房機器を後から搬入・設置する必要が生じました。
ここに、計画と実際の避難生活との時間差があります。
令和8年熊本地震で実際に行われている暑さ対策
本稿は、2026年8月4日時点で確認できる情報をもとに整理しています。
1.国が行っていること
冷房機器・飲料水などのプッシュ型支援
8月3日時点の政府資料では、被災地へのプッシュ型支援として、次の物資が到着または手配されています。
- 飲料:約18万本が到着、約21万本を手配中
- エアコン・クーラー:約730台が到着、約200台を手配中
- 携帯トイレ:4万5,000回分が到着
- 段ボールベッド:約950個が到着、約4,050個を手配中
暑さ対策はクーラーだけではありません。水分補給、トイレ、睡眠環境まで含めて避難生活を改善する支援が進められています。
ただし、冷房機器が被災地へ到着しただけでは、避難所の暑さ対策は完成しません。
- どの避難所へ送るか決める
- 搬送する
- 設置場所を確保する
- 電源容量を確認する
- 配管や電気工事を行う
- 避難者の配置を変更する
という作業が必要です。
支援物資の到着と、避難者が実際に涼しく過ごせるようになる時点には差があります。
冷房のある教室や施設を使う
文部科学省は、冷房のない体育館だけに避難者を集めるのではなく、冷房設備のある普通教室などを避難所として使うよう通知しました。
これは、冷房機器を新たに設置するだけでなく、
すでに冷房がある場所へ、人を移す。
という暑さ対策です。
ホテル・旅館へ避難先を変更する
熊本県では、国と県が確保したホテルなどへの避難受付が始まり、宿泊費は原則として公費負担とされています。8月3日時点では、県内94施設が受入先として確保されていました。
体育館生活を続けることが難しい人を、
- ホテル
- 旅館
- 冷房のある公共施設
- 福祉的な配慮が可能な場所
へ移すことも、重要な暑さ対策です。
2.熊本県・市町が行っていること
現在利用できる涼しい場所を示す
熊本県は、県内のクーリングシェルター570か所、熱中症予防休憩所306か所を公開しています。
ただし、地震によって施設が被災し、利用できない可能性があるため、県は利用前に施設状況を確認するよう求めています。
ここでも重要なのは、
名簿に載っていることと、発災後に実際に使えることは別である。
という点です。
平時の指定情報だけでなく、発災後の開設状況、建物の安全性、電気、水道、受入可能人数を再確認する必要があります。
避難所へ業務用エアコンを設置する
宇城市では、市内11か所に開設している避難所のうち、松橋中学校の武道場へ6馬力の業務用エアコン4台を設置する工事が、8月3日から4日にかけて行われました。機器は経済産業省による物資支援です。
この事例は、国と市町の役割をよく示しています。
- 国が機器を調達する
- 市が設置先を選ぶ
- 事業者が搬入・工事を行う
- 避難所運営側が避難者の配置を調整する
機器が到着しても、設置工事と電源接続が終わるまで使えません。
だからこそ、支援が機能するまでの時間をどうつなぐかが重要になります。
車中泊者を支援対象として把握する
内閣府は、やむを得ず車中泊をする人が発生することを前提に、自治体が平時から車中泊スペース、健康上の注意、物資支援、人数把握などを準備するよう求めています。
熊本市は今回の地震前から、熊本競輪場とアクアドームくまもとの駐車場を車中泊避難場所として指定し、トイレや食事、情報提供を行える支援体制を整えていました。市は、車中泊を推奨するものではなく、避難所に入れないなどの事情で選ばざるを得ない人の安全確保を目的としています。
避難所に入れない・入らない人がいる
車中泊をする人を、一律に「自分で車を選んだ人」と考えてはいけません。
実際には、さまざまな事情があります。
- 避難所が満員で入れない
- 建物の安全確認が終わっていない
- 余震が怖く、建物内へ入れない
- ペットと一緒に避難できない
- 高齢者や障害のある家族が体育館で過ごせない
- 乳幼児がいて、周囲への負担を心配する
- プライバシーを確保できない
- 避難所の物資やトイレを利用しながら、車で眠る
つまり、避難所の外にいるからといって、支援が不要なわけではありません。
車中泊者や避難所周辺で待機する人にも、
- 飲料水
- トイレ
- 暑さをしのぐ場所
- 医療・保健の巡回
- 防犯
- 給油情報
- 避難者登録
- 冷房施設への移送
が必要です。
車のエアコンは、避難所の冷房の代わりにはならない
令和8年熊本地震では、車中泊をしていた70代女性が、燃料のない車内で発見され、熱中症の疑いによる死亡が報告されました。
車内はエアコンを動かせば涼しくできます。
しかし、その冷房は燃料に依存します。
- ガソリンスタンドが被災する
- 燃料供給が遅れる
- 給油所に長い列ができる
- 移動中に燃料を消費する
- エンジンを止めれば車内温度が上がる
- 車内にいるため、体調悪化を発見されにくい
車は、冷房設備のある避難所の代替施設ではありません。
燃料と見守りが途切れれば、急に危険な空間へ変わる避難環境です。
車中泊をする場合も、冷房のある施設へ移動できる場所、定期的に体調を確認してくれる人、飲料水とトイレを確保できる支援拠点との接続が必要です。
国・行政・自分の役割を分ける
国が担うこと
国は、全国共通の基準や制度をつくり、広域支援を行います。
- 避難所環境の基準やガイドライン
- 学校体育館の空調・断熱整備への財政支援
- クーラー、飲料水、電源車などのプッシュ型支援
- ホテル避難制度の調整
- 車中泊・在宅避難者支援の手引き
- 被災自治体だけでは対応できない物資・人員の支援
ただし、国は一人ひとりの避難先や家族事情まで、発災直後に把握できるわけではありません。
県・市町が担うこと
県や市町は、地域の施設を把握し、人と物資を実際につなぐ役割を持ちます。
- 避難所の開設と安全確認
- 各施設の空調・電源・給水・トイレ状況の把握
- 冷房のある教室や公共施設の開放
- 避難者の分散・移送
- クーリングシェルターの開設状況の発信
- 車中泊者・在宅避難者の把握
- 保健師や医療関係者による巡回
- ホテル、旅館、福祉避難所との調整
- 空調機器や物資の設置・配布
行政側に必要なのは、「避難所の住所一覧」だけではありません。
その施設で、夏や冬に何人が生活できるのかという性能情報です。
自分と家族で担うこと
個人が行政設備の代わりをすべて用意することはできません。
広い体育館の冷房不足を、携帯扇風機1台で解決することも不可能です。
それでも、支援が届いて機能するまでの時間をつなぐことはできます。
自分で行うべきことは、
- 避難所候補を調べる
- 家族の健康状態に合う避難先を選ぶ
- 暑さ・寒さ対策品を持ち出す
- 水分や電源を管理する
- 危険な場所で我慢を続けない
- 必要なら避難先を変更する
ことです。
自分が避難する候補を2〜3か所調べる
避難所は、災害が起きてから初めて調べる場所ではありません。
平時のうちに、自宅から移動できる避難先を2〜3か所選び、次の項目を確認します。
避難所候補で確認すること
□ 体育館に冷房・暖房があるか
□ 空調は体育館全体に効く設備か
□ 冷暖房のある教室や会議室を避難に使えるか
□ 停電時にも空調を動かせる非常用電源があるか
□ 高齢者、乳幼児、障害者などが過ごす別室があるか
□ 飲料水と生活用水を確保できるか
□ 断水時のトイレ対策があるか
□ 毛布、マット、段ボールベッドなどがあるか
□ 満員時の次の避難先が決まっているか
□ 車中泊者の受付場所や支援方法があるか
最寄りの避難所だけに決めるのではなく、
- 別の学校
- 市民センター
- 公民館
- 親戚・知人宅
- ホテル
- 福祉避難所
などを組み合わせます。
避難所訓練に参加して、実際の体育館を見る
ホームページの避難所一覧だけでは、施設の暑さや寒さは分かりません。
地域の防災訓練や避難所開設訓練がある場合は、実際に体育館へ入り、確認しておきます。
夏に見ること
- 日中、体育館内にどれほど熱がこもるか
- 窓を開けて換気できるか
- 空調設備の位置と能力
- 日陰になる待機場所があるか
- 飲料水を受け取る場所
- 冷房のある別室へ移動できるか
冬に見ること
- 床がどれほど冷えるか
- 毛布だけで眠れそうか
- 床との間に敷くマットがあるか
- 暖房設備があるか
- 隙間風や結露が起きないか
- 温かい飲み物や食事を提供できるか
訓練は、避難所まで歩く練習だけではありません。
その施設で、自分と家族が本当に72時間以上過ごせるかを確認する機会です。
設備が分からなければ、学校だけでなく、市町の危機管理・防災担当課へ問い合わせて確認します。
避難所調査が「72時間以上の防災リュック」を変える
発災直後に持ち出す装備と、自宅避難が困難だと判断したあとに持ち出す生活装備は同じではありません。
第1段階:0分の備え
地震直後、自宅内で命を守るための装備です。
- 靴
- ライト
- 手袋
- ヘルメット
- ホイッスル
- スマートフォン
第2段階:避難移動の装備
自宅から安全な場所へ移動するための装備です。
- 飲料水
- 雨具
- 地図
- 救急用品
- 携帯トイレ
- 貴重品
- 薬
- 家族固有の用品
第3段階:72時間以上の生活装備
自宅の損傷、停電、断水、余震などにより、自宅での生活が難しいと判断したあとに持ち出す装備です。
- 暑さ・寒さ対策
- 睡眠用品
- 衛生用品
- 充電・電源
- 給水容器
- 食料
- 薬
- 着替え
- 避難先の設備に応じた追加品
「72時間以上の防災リュック」とは、すべてを一つのリュックに詰め込むという意味ではありません。
追加バッグ、キャリーカート、家族での分担、車両が安全に使える場合の積載なども含めて設計します。
夏の体育館へ持ち出す追加装備
避難予定の体育館に冷房がない場合は、暑さ対策を強化します。
- 空調服・ファン付きウェア
- 空調服の予備バッテリー
- 携帯扇風機
- モバイルバッテリー
- 冷感タオル
- 速乾性の着替え
- 帽子
- うちわ
- 経口補水液
- 塩分補給品
- 給水用ボトル
- 折りたたみ給水袋
- 保冷バッグ
- 冷却材
- 体温計
ただし、装備は単体で考えてはいけません。
空調服には電源が必要
空調服は、バッテリーが切れれば止まります。
そのため、
- 連続使用時間
- 予備バッテリーの数
- USB充電の可否
- スマートフォンとの電源配分
- 72時間で何回充電できるか
まで考えます。
これは空調服を買う話ではなく、避難生活中の電力配分を設計する話です。
冷感タオルには水が必要
冷感タオルの中には、水で濡らして使う製品があります。
断水中に、限られた飲料水をタオルへ使えるとは限りません。
通常のタオル、ボディシート、少量の水で使える用品などを組み合わせ、飲料水と冷却用の水を分けて考えます。
水は「最初に飲む分」と「次を受け取る容器」に分ける
1人1日3リットルを3日分持つと、水だけで約9キログラムになります。
7日分すべてを背負って避難するのは、多くの人にとって現実的ではありません。
そのため、水は二段階で考えます。
移動中と到着直後の水
- ペットボトル
- 水筒
- 経口補水液
- すぐ取り出せる小型ボトル
避難所で給水を受けるための容器
- 折りたたみ式給水袋
- 広口ボトル
- ポリタンク
- キャリーカート
- 給水袋を固定できるバッグ
最初の水を持ち、次の水を受け取れるようにする。
これが、避難移動と長期生活を両立させる水の設計です。
冬の体育館では「床」と「睡眠」を重視する
今回の熊本地震では暑さが問題になっていますが、冬の災害でも基本構造は同じです。
冷暖房機器や毛布が届くまでには時間がかかり、体育館の床は身体の熱を奪います。
冬の追加装備では、毛布の枚数だけでなく、
- 断熱マット
- 寝袋
- 防寒着
- 帽子
- 手袋
- 厚手の靴下
- ネックウォーマー
- アルミマット
- 使い捨てカイロ
- 温かい飲み物を作る手段
を考えます。
夏は「空気を冷やす・風を作る・水分を保つ」。
冬は「床から離す・熱を逃がさない・濡れを避ける」。
季節によって、防災リュックの中身は変わります。
避難先ごとに追加装備を決める
| 避難先候補 | 空調 | 非常用電源 | 水・トイレ | 追加装備 |
|---|---|---|---|---|
| 小学校体育館 | 冷房なし | 要確認 | 応急給水・簡易トイレ | 空調服、予備電源、冷感タオル、給水袋、断熱マット |
| 市民センター | 一部空調あり | 要確認 | 水道・洋式トイレ | 寝具、携帯トイレ、延長コード、着替え |
| 親戚宅 | 家庭用冷房 | 停電時停止 | 家庭備蓄あり | 水、食料、薬、モバイル電源 |
| 車中泊場所 | 車両冷房 | 燃料依存 | 支援拠点による | 飲料、日よけ、電源、車外の冷房施設への移動計画 |
この表を家族防災会議で作っておけば、発災後に「何を持って出るのか」で迷いにくくなります。
これほど支援が届いても、普段の生活には戻らない
令和8年熊本地震では、国・県・市町による大規模な支援が進んでいます。
冷房機器が送られ、飲料水や携帯トイレが届き、冷房のある教室やクーリングシェルターが開放され、ホテル避難も始まっています。
それでも、被災前の生活がそのまま再現されるわけではありません。
- 家庭と同じ室温にはならない
- 好きな時間に入浴できない
- トイレを自由に使えない
- 静かに眠れない
- 洗濯や着替えが十分にできない
- コンセントを自由に使えない
- プライバシーを確保しにくい
- 車中泊や在宅避難者には情報が届きにくい
公的支援は、日常生活を完全に復元するものではありません。
命と最低限の生活を支えるためのものです。
だから防災では、
行政支援があることを前提にしながら、その支援が自分に届いて機能するまでを、自分の備えでつなぐ。
という考え方が必要になります。
最も厳しい「最初の1週間」を想定する
国も、家庭では最低3日分、可能であれば1週間分の水・食料・生活必需品を備えるよう呼びかけています。特に南海トラフ巨大地震のような広域災害では、1週間以上の備蓄が望ましいとされています。
この1週間の備えは、被災後も快適に過ごすためのぜいたくではありません。
- 熱中症や低体温症を防ぐ
- 脱水を防ぐ
- トイレを我慢しない
- 最低限の睡眠を取る
- 常用薬を切らさない
- 情報と通信を維持する
- 危険な避難場所から移動する
ための、命を守る生活環境の備えです。
最後に
防災リュックの中身は、商品一覧から決めるものではありません。
自宅を出る理由。
避難先までの移動方法。
避難する施設の空調、電源、水、トイレ、床の環境。
そこで過ごす時間。
これらから逆算して決めるものです。
令和8年熊本地震で明らかになったのは、支援がないことではありません。
これほど大規模な支援が行われても、支援が避難者一人ひとりへ届き、実際に使えるようになるまでには時間がかかるということです。
支援は来る。けれど、普段の快適な生活がすぐ戻るわけではない。
だからこそ、最も厳しい最初の1週間を、自分と家族でつなぐ備えが必要になる。
避難所候補を2〜3か所調べる。
訓練に参加して、実際の体育館を見る。
分からない設備は、市町や施設へ確認する。
その結果を、72時間以上の生活装備へ反映する。
これが、香川県で真夏・真冬の災害に備えるための、現実的な避難生活設計です。
備えは愛だ。
追記:初動対応用と「避難所移動型リュック」を分けて準備する
防災リュックは、一つにすべてを詰め込めば完成するものではありません。
発災直後に必要なものと、自宅の安全確認を終えたあと、避難所で数日間生活するために必要なものでは、役割も重さも違います。
みのる防災では、防災リュックを持ち物一覧ではなく、災害発生後の行動から逆算する**「災害時行動設計」**として考えています。
既存の防災リュック理論では、
- 地震直後に動ける状態をつくる「0分の備え」
- 避難速度を落とさない軽量な「36時間リュック」
- 自宅・玄関・車などへ分散する「72時間備蓄」
という時間軸で整理しています。
今回の暑さ・寒さ対策では、ここへさらに、
自宅避難が難しいと判断したあとに持ち出す「避難所移動型リュック」
という考え方を加えます。
発災直後は、重い生活用品をすべて背負わない
地震が起きた直後は、室内のガラス、家具、倒壊物、火災、津波などから身を守らなければなりません。
この段階で優先するのは、生活の快適さではなく、安全に動けることです。
初動対応用の装備
- 靴
- ライト
- 手袋
- ヘルメット
- ホイッスル
- スマートフォン
- 最低限の飲料水
- 常用薬
- 携帯トイレ
- 雨具
- 貴重品
最初から大量の水、寝袋、空調服、着替え、食料をすべて背負えば、リュックは重くなります。
重いリュックは移動速度を落とし、転倒や疲労の原因にもなります。
既存の防災リュック理論でも、すべてを詰め込むのではなく、避難時に動ける重さを優先する考え方を示しています。
初動対応のあとに「自宅で生活を続けられるか」を判断する
身の安全を確保したあと、自宅と周辺の状況を確認します。
自宅避難を続けられるか確認する項目
□ 建物に倒壊や大きな損傷の危険がないか
□ 火災やガス漏れの危険がないか
□ 余震が続いても安全な部屋があるか
□ 停電時にも暑さ・寒さへ対応できるか
□ 飲料水と生活用水を確保できるか
□ トイレを使用できるか
□ 常用薬や食料があるか
□ 家族の健康状態に問題がないか
自宅が安全で、生活設備も維持できるのであれば、在宅避難を選べる場合があります。
一方で、
- 建物の損傷が大きい
- 停電で室温を維持できない
- 断水でトイレが使えない
- 高齢者や乳幼児がいる
- 余震が怖く、睡眠を取れない
といった状況なら、避難所、親戚宅、ホテルなどへの移動を検討します。
この判断が行われた時点で、初動対応用リュックから避難所移動型リュックへ切り替えることになります。
避難所移動型リュックとは
避難所移動型リュックは、発災直後に走って逃げるためのリュックではありません。
自宅の安全確認を終え、
これから避難所などで72時間以上生活する
と判断したときに、追加で持ち出す生活装備です。
基本となる装備
- 着替え
- 下着・靴下
- タオル
- 携帯トイレ
- 衛生用品
- 常用薬
- 食料
- モバイルバッテリー
- 充電ケーブル
- 給水袋・給水ボトル
- 寝袋・毛布
- 断熱マット
- 耳栓・アイマスク
- 家族固有の用品
さらに、事前に調べた避難所の環境に応じて、季節装備を追加します。
真夏の避難所移動型リュック
避難予定の体育館に十分な冷房がない場合は、暑さ対策を強化します。
- 空調服・ファン付きウェア
- 空調服用の予備バッテリー
- 携帯扇風機
- 冷感タオル
- 通常の汗拭きタオル
- 速乾性の着替え
- 帽子
- うちわ
- 経口補水液
- 塩分補給品
- 折りたたみ式給水袋
- 保冷バッグ
- 冷却材
- 体温計
ただし、空調服や扇風機は電源がなければ使えません。
そのため、装備を選ぶときは、製品の有無だけでなく、
- 連続使用時間
- 予備電源
- 充電方法
- スマートフォンとの電力配分
- 72時間後に再充電できる見込み
まで確認します。
真冬の避難所移動型リュック
冬の体育館では、室温だけでなく、床から奪われる熱への対策が重要です。
- 寝袋
- 断熱マット
- 防寒着
- 帽子
- 手袋
- 厚手の靴下
- ネックウォーマー
- アルミマット
- 使い捨てカイロ
- 温かい飲み物を入れるボトル
- 濡れた衣類を入れる袋
毛布が配られるとしても、配布までの時間や枚数は分かりません。
自分の身体と床の間に断熱層をつくれる装備を、優先して準備します。
二つのリュックは、同じ場所に置かなくてもよい
初動対応用と避難所移動型を、同じリュックにまとめる必要はありません。
配置例
寝室
- 0分の備え
- 靴
- ライト
- 手袋
- ヘルメット
玄関
- 初動対応・避難移動用リュック
- 雨具
- 最低限の水
- 貴重品
- 携帯トイレ
押し入れ・物置
- 避難所移動型バッグ
- 寝袋
- マット
- 着替え
- 季節用品
車
- 給水容器
- キャリーカート
- 追加の毛布
- 日よけ
- 予備電源
このように分散しておけば、状況に応じて必要な装備だけを選べます。
ただし、津波や浸水が迫っている場合は、追加装備を取りに戻ってはいけません。命を守る避難が最優先です。
避難所候補ごとに「追加装備」を決めておく
避難所移動型リュックをつくる前に、自分が利用する可能性のある避難所を2〜3か所調べます。
| 避難先候補 | 確認した環境 | 追加する装備 |
|---|---|---|
| 小学校体育館 | 冷房なし・非常用電源不明 | 空調服、予備電源、冷感タオル、給水袋 |
| 市民センター | 一部空調あり・洋式トイレあり | 携帯トイレ、寝具、着替え |
| 親戚宅 | 家庭用空調あり・備蓄水あり | 薬、食料、充電機器 |
| 車中泊場所 | 冷房は燃料依存 | 日よけ、飲料水、電源、冷房施設への移動計画 |
同じ家族でも、全員が同じ装備を持つ必要はありません。
- 大人は水や電源を持つ
- 高齢者は軽い個人用品を持つ
- 子どもは自分の水と安心用品を持つ
というように、身体能力と役割に応じて分担します。
防災リュックを「商品」ではなく「行動」で整理する
市販の防災リュックには、多くの用品が入っています。
しかし、自分がどの災害から逃げ、どこへ移動し、何日過ごすかが決まっていなければ、必要な用品も決まりません。
防災リュックは、
- 何が入っているか
- 何点セットか
- 価格はいくらか
だけで選ぶものではありません。
発災直後に何をするのか。
自宅で生活できるのか。
どの避難所へ、どの方法で移動するのか。
そこで何日間過ごすのか。
この行動から逆算して設計するものです。
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防災リュックの作り方を解説|新刊『その防災リュック、本当に使えますか?』

https://kagawabousaiminoru.com/entry/minorubousairyukku
同記事では、防災リュックを単なる持ち物リストではなく、避難行動、配置、家族の役割から考える「災害時行動設計」として整理しています。
① ポータル案内・香川防災の全体像
ポータルの理念、入口、全体構造を説明する記事です。
② ハザードマップ・防災情報の基本
災害の種類を問わず、最初に地図や情報を確認するための記事です。
③ ため池防災・ため池ハザードマップ
香川県の地域特性として、独立カテゴリにした方が強い記事群です。
企業・事業者向け
④ 香川の災害リスクを知る
高潮・沿岸災害
河川・洪水・浸水
土砂災害
地震
⑤ 避難判断・避難行動
「いつ・どこへ・どの手段で避難するか」を決める記事群です。
⑥ 避難所・避難生活
避難所へ行った後、または在宅避難を続ける際の生活課題を扱う記事です。
⑦ 防災制度・教訓・企業BCP
防災を個人の備えだけで終わらせず、制度や事業継続まで考える記事です。

