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── みのる防災

© 2025 Minoru Mori 本作は Creative Commons 表示 4.0 国際ライセンスのもとで提供されます。 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
第一章【なぜ“60〜90% or 20〜50%”?】南海トラフ新発表と事前避難から読み解く備え方(香川県の民間による対策情報)
南海トラフ地震の確率見直しと、事前避難から考える備え方【2026年時点の整理】
どうもみなさんこんにちは。
みのる防災のみのるです。
今回は、南海トラフ地震の発生確率について整理します。
南海トラフ地震については、これまで
「30年以内に70〜80%」
「30年以内に80%程度」
といった数字を見たことがある人も多いと思います。
しかし、2025年9月に地震調査研究推進本部の長期評価が一部改訂され、
60〜90%程度以上
20〜50%
という二つの確率が併記される形になりました。
これを見て、
「え?どっちなの?」
「下がったの?」
「高いの?低いの?」
「結局、どう受け止めればいいの?」
と感じた人も多いはずです。
この記事では、その違和感の正体を整理します。
結論から言うと、これは「危険が小さくなった」という話ではありません。
むしろ、
地震発生確率には複数の計算方法があり、その違いを隠さず示した
ということです。
そして、防災上は、地震本部も示しているように、具体的な確率値を伝える場合は、より高い方の
60〜90%程度以上
を強調して備えを進める考え方が示されています。
数字に振り回されるのではなく、数字を行動に変える。
ここが大切です。
1|まず振り返る:2024年8月、日向灘の地震と初の「巨大地震注意」
まず、2024年8月の出来事を振り返ります。
2024年8月8日、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。
宮崎県では最大震度6弱を観測しました。
この地震を受けて、気象庁は
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)
を発表しました。
これは、南海トラフ地震臨時情報の運用開始以来、初めての発表でした。
ただし、ここで注意したいのは、この情報は
「今すぐ全員避難してください」
という意味ではなかった、ということです。
巨大地震注意は、
「南海トラフ沿いで大規模地震が発生する可能性が、平常時と比べて相対的に高まっている」
という情報です。
そのため、国や自治体は、日頃の備えの再確認を呼びかけました。
たとえば、
家具の固定を確認する。
避難場所や避難経路を確認する。
家族との連絡方法を確認する。
非常持ち出し品を確認する。
水・食料・薬・電源を確認する。
津波避難が必要な地域では、すぐ避難できる準備をする。
こうした行動が求められました。
そして、特に重要になるのが、避難に時間がかかる人への対応です。
高齢者。
要介護者。
障害のある人。
乳幼児を抱える家庭。
医療的ケアが必要な人。
移動に支援が必要な人。
こうした人たちは、地震や津波が起きてからでは、避難が間に合わない可能性があります。
そのため、南海トラフ地震臨時情報では、地域や状況によって、事前避難の検討が重要になります。
2024年8月の日向灘の地震は、
「事前避難」という考え方が、机上の制度から現実の行動に近づいた出来事
だったと見ることができます。
2|2025年9月、南海トラフ地震の長期評価が一部改訂
次に、2025年9月の発表です。
地震調査研究推進本部は、2025年9月26日に「南海トラフの地震活動の長期評価」を一部改訂しました。
そこで示されたのが、
60〜90%程度以上
20〜50%
という二つの確率です。
これまでのように、
「30年以内に80%程度」
という一つの表現だけではなく、二つの計算方法による結果が併記される形になりました。
この「併記」が、多くの人に違和感を与えました。
なぜなら、60〜90%程度以上と20〜50%では、数字の印象がかなり違うからです。
60〜90%程度以上と聞けば、
「かなり高い」
「いつ起きてもおかしくない」
「これは本気で備えないといけない」
と感じます。
一方、20〜50%と聞くと、
「思ったより低いのでは?」
「前より危険度が下がったの?」
「少し安心していいの?」
と感じる人もいるでしょう。
しかし、この読み方には注意が必要です。
3|「20〜50%」は、危険が消えたという意味ではない
まず大切なのは、
20〜50%という数字が出たからといって、南海トラフ地震のリスクが消えたわけではない
ということです。
地震本部の整理では、二つの確率は、異なる計算方法によって出されたものです。
一つは、従来から使われてきた考え方に、新たな知見を反映したもの。
もう一つは、地震の発生履歴をもとにした計算方法です。
つまり、
「どちらかが正しく、どちらかが間違い」
という話ではありません。
それぞれ科学的な根拠があり、単純に優劣をつけられるものではない。
だからこそ、二つの数字が併記されたのです。
ここでやってはいけないのは、
「低い方の20〜50%だけを見て安心すること」
です。
防災では、都合のよい数字だけを選んではいけません。
不確実性があるからこそ、幅をもって考える必要があります。
4|なぜ「60〜90%程度以上」を強調するのか?
では、二つの数字があるなら、私たちはどちらを見て備えればよいのでしょうか。
地震本部は、防災対策を進める上では、具体的な確率値を伝える場合、より高い方の
60〜90%程度以上
を強調することが望ましい、という考え方を示しています。
理由はシンプルです。
防災では、
疑わしいときは行動する
という考え方が重要だからです。
地震は、正確に日時を予測することができません。
「来年起きる」
「10年後に起きる」
「30年以内の何年目に起きる」
という形で、確定的に言い当てることはできません。
だからこそ、確率は予言ではなく、備えるための判断材料として使う必要があります。
低い方だけを見て安心するのではなく、高い方も見て備える。
これが、防災上の現実的な考え方です。
5|「20〜90%」とまとめてはいけない理由
ここで、もう一つ重要な注意点があります。
二つの数字があるからといって、
20〜90%程度以上
とまとめて表現するのは適切ではありません。
なぜなら、20〜50%と60〜90%程度以上は、同じ物差しで出した一つの幅ではないからです。
それぞれ、計算の考え方が違います。
別々の計算方法から出た数字を、無理につなげて
「20〜90%」
と書いてしまうと、かえって意味がわかりにくくなります。
これは、防災情報の伝え方としても注意が必要です。
ブログやSNSで発信する場合も、
「南海トラフ地震の発生確率は20〜90%」
と雑にまとめるのではなく、
地震本部では、20〜50%または60〜90%程度以上と評価されている
防災対策上は、60〜90%程度以上を強調することが望ましいとされている
という形で書くほうが正確です。
6|違和感の正体は「用いる確率の違い」
では、なぜ私たちはこの発表に違和感を覚えるのでしょうか。
それは、
同じ南海トラフ地震の話なのに、見える数字が大きく違うから
です。
ここで、身近な例を使って考えてみます。
たとえば、年収の話です。
平均年収を見ると、一部の非常に高い年収の人に引っ張られて、数字が高く見えることがあります。
一方、中央値を見ると、より多くの人の実感に近い数字になることがあります。
平均も中央値も、どちらも統計としては意味があります。
しかし、見え方はかなり違います。
南海トラフ地震の確率も、これに似ています。
どのデータを使うのか。
どのモデルを使うのか。
どの不確実性を反映するのか。
どの期間を基準にするのか。
それによって、見える数字が変わります。
つまり、違和感の正体は、
数字が矛盾していることではなく、用いる確率の考え方が違うこと
です。
7|防災は「確率が低いから安心」では考えられない
ここからが大切です。
防災では、
「確率が低いから安心」
という考え方は危険です。
なぜなら、災害は一度起きると、被害が非常に大きくなることがあるからです。
日常の小さなトラブルなら、多少確率が低ければ後回しにしてもよいかもしれません。
しかし、南海トラフ地震のように、ひとたび発生すれば広域に大きな被害をもたらす災害では、確率だけで判断することはできません。
たとえば、
発生確率は低く見えても、被害が極めて大きい。
一度起きると、生活・仕事・医療・介護・物流が止まる。
家族の命や地域の機能に関わる。
復旧までに長い時間がかかる。
こうしたリスクは、低い数字だけを見て無視することはできません。
防災で見るべきなのは、
起きる確率だけではなく、起きたときの影響の大きさ
です。
8|「べき乗則」で考えると、巨大災害の怖さが見える
ここで、少し考え方を変えてみます。
災害を考えるときには、「べき乗則」という見方が役に立ちます。
べき乗則とは、簡単に言えば、
小さな出来事は頻繁に起きるが、めったに起きない大きな出来事も一定の割合で起きる
という考え方です。
日常の小さな地震は多く発生します。
少し大きな地震は、それより少なくなります。
さらに大きな地震は、もっと少なくなります。
しかし、巨大地震がゼロになるわけではありません。
頻度は低くても、起きたときの影響は非常に大きい。
これが、巨大災害の怖さです。
南海トラフ地震も同じです。
毎年のように大きな被害が出るわけではありません。
しかし、ひとたび最大クラスの地震が起きれば、個人の生活だけでなく、地域、企業、医療、介護、物流、行政、経済にまで影響が及びます。
だから、防災では、
めったに起きないから大丈夫
ではなく、
めったに起きなくても、起きたら社会全体が揺さぶられる
と考える必要があります。
9|2024年の日向灘地震と2025年の確率見直しが示したこと
2024年の日向灘地震では、初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。
2025年の長期評価の一部改訂では、発生確率が二つの計算方法で示される形になりました。
この二つの出来事は、別々の話のように見えます。
しかし、共通しているメッセージがあります。
それは、
不確実だからこそ、備えを進める
ということです。
地震がいつ起きるかはわかりません。
臨時情報が出たからといって、必ず巨大地震が起きるわけではありません。
確率が高いからといって、明日起きると決まっているわけでもありません。
一方で、確率が低く見える計算結果があるからといって、安心してよいわけでもありません。
わからないことが多い。
だから動かない。
ではありません。
わからないことが多い。
だから、今できる備えを進める。
ここが、南海トラフ地震への向き合い方です。
10|事前避難は「特別な人だけの話」ではない
南海トラフ地震臨時情報が出たとき、よく誤解されるのが事前避難です。
事前避難というと、
「高齢者や要支援者だけの話でしょ」
と思われるかもしれません。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
避難に時間がかかる人が家族にいる場合。
津波避難が必要な地域に住んでいる場合。
夜間に避難が難しい場合。
車がない場合。
道路が混雑すると避難できない場合。
ペットや乳幼児がいる場合。
医療機器や薬が必要な場合。
こうした家庭では、事前避難の考え方は非常に重要になります。
また、事業所や施設でも同じです。
介護施設。
障害者施設。
保育施設。
医療機関。
学校。
観光施設。
宿泊施設。
建設会社。
物流会社。
それぞれ、臨時情報が出たときに何を確認するのかを、事前に決めておく必要があります。
「臨時情報が出たら考える」
では遅い場合があります。
臨時情報が出たときに慌てないために、平時から
誰が判断するのか。
誰に連絡するのか。
どこへ避難するのか。
何を持っていくのか。
どの業務を止めるのか。
どの業務を続けるのか。
利用者や家族へどう伝えるのか。
ここを決めておくことが大切です。
11|では、私たちは何をすればよいのか?
確率の数字を見て終わりにしてはいけません。
大切なのは、行動に変えることです。
まず家庭では、次のことを確認します。
水は何日分あるか。
食料は何日分あるか。
常備薬は足りているか。
トイレ用品はあるか。
モバイルバッテリーは使えるか。
懐中電灯や非常灯はあるか。
家具は固定しているか。
寝室に倒れてくる家具はないか。
避難場所と避難経路を家族で確認しているか。
連絡が取れないときの集合場所を決めているか。
次に、地域や職場では、次のことを確認します。
職員の安否確認方法はあるか。
夜間・休日の初動対応を決めているか。
停電時の対応を決めているか。
断水時の対応を決めているか。
通信が止まったときの連絡手段はあるか。
重要業務は何かを決めているか。
取引先や委託先が止まった場合を考えているか。
燃料や資材の確保を考えているか。
利用者・入居者・顧客への説明方法を決めているか。
南海トラフ地震への備えは、防災グッズを買うだけでは終わりません。
家庭なら生活継続。
会社なら事業継続。
介護施設ならサービス継続。
建設会社なら復旧対応と自社継続。
地域なら共助と孤立対策。
それぞれの立場で、止まるものを確認する必要があります。
12|香川県・四国で考えるべきこと
香川県は、太平洋沿岸ではありません。
そのため、高知県や徳島県の太平洋沿岸と比べると、津波の直接的な被害は相対的に小さい地域もあります。
しかし、南海トラフ地震の影響を受けないわけではありません。
香川県で考えるべきなのは、
揺れ。
液状化。
ため池の損傷や決壊。
停電。
断水。
通信障害。
物流停止。
燃料不足。
橋や道路の機能低下。
医療・介護サービスの停滞。
取引先の被災。
観光・流通・建設業への影響。
こうした複合的な影響です。
南海トラフ地震は、太平洋沿岸だけの問題ではありません。
瀬戸内側でも、
生活が止まる。
仕事が止まる。
物流が止まる。
支援が遅れる。
人手が足りなくなる。
こうした事態を考えておく必要があります。
だから、香川県で大切なのは、
「津波が来るかどうか」
だけではありません。
自分の地域で何が止まるのか
を確認することです。
13|まとめ:数字に惑わされず、行動に変える
最後に整理します。
2024年8月の日向灘地震では、初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。
2025年9月には、南海トラフ地震の長期評価が一部改訂され、
60〜90%程度以上
20〜50%
という二つの確率が示されました。
この二つの数字は、どちらかが正しく、どちらかが間違いという話ではありません。
異なる計算方法による評価です。
ただし、防災対策を進める上では、より高い方の
60〜90%程度以上
を強調することが望ましいとされています。
ここで大切なのは、
「20〜50%なら安心」
「60〜90%なら怖い」
という単純な受け止め方をしないことです。
確率は、未来を言い当てる数字ではありません。
備えを始めるための判断材料です。
南海トラフ地震は、いつ起きるかを正確に予測することはできません。
だからこそ、数字に振り回されるのではなく、今できる備えを進めることが大切です。
家庭で何が止まるのか。
会社で何が止まるのか。
施設で誰を守る必要があるのか。
地域で支援が遅れたとき、どう動くのか。
そこまで考えて、はじめて確率が行動に変わります。
不安をあおるためではありません。
正しく理解して、今できる備えを始めるためです。
備えは愛だ。
続きの記事
第二章-洞察!南海トラフ確率の根拠の真相「確率二本立て」の正体 ——なぜ「60〜90%以上」と「20〜50%」を併記したのか 2026.6.19更新
参考資料
・地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価」
・地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価を一部改訂」
・気象庁「南海トラフ地震臨時情報」関連資料
・内閣府「南海トラフ地震臨時情報とは」
・宮崎県・徳島県など自治体の南海トラフ地震関連情報
南海トラフ地震の関連の考察記事まとめ
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2026.6.19リライト(2025.10.3) ①南海トラフの全体像
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2026.6.19.リライト(2025.9.27) ②確率のしくみ
第一章【なぜ“60〜90% or 20〜50%”?】南海トラフ新発表と事前避難から読み解く備え方【2025年最新版】
2026.6.19リライト(2025.9.28) ②確率のしくみ
第二章-洞察!南海トラフ確率の根拠の真相「確率二本立て」の正体 ——なぜ「60〜90%以上」と「20〜50%」を併記したのか
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地震・津波・台風・停電・火山灰への備え方 香川県で考える「災害別の備え」と関連記事まとめ2026.6.19リライト(2025.6.11) ④検証記事
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