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南海トラフと南海トラフ巨大地震───違いは何か?
「巨大」と呼ばれる理由と、確率の見方を整理する(香川県の民間による対策情報)
「南海トラフ地震は、30年以内に高い確率で発生する」
この言葉を聞いて、不安になった人は多いと思います。
よく見かけるのは、
「30年以内に70〜80%」
「80%程度」
「60〜90%程度以上」
「20〜50%」
といった数字です。
数字だけを見ると、
「結局、どれが正しいの?」
「南海トラフ地震と南海トラフ巨大地震は同じなの?」
「香川県のような瀬戸内側でも備えが必要なの?」
と、混乱しやすくなります。
しかし、まず最初に整理しておきたいことがあります。
「南海トラフ」と「南海トラフ地震」と「南海トラフ巨大地震」は、同じ意味ではありません。
ここを混同すると、確率の受け止め方も、備え方もズレてしまいます。
なお、南海トラフ地震の発生確率については、
「70〜80%」「60〜90%程度以上」「20〜50%」など、複数の数字が出てくるため、混乱しやすい部分です。
この記事では、まず言葉の違いを整理します。
確率の見方について詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。
▶ 南海トラフ地震の確率はなぜ変わるのか?「60〜90%程度以上」と「20〜50%」の違いを整理する
1|南海トラフとは何か?──まず“場所”の名前
南海トラフとは、静岡県の駿河湾から、遠州灘、熊野灘、紀伊半島沖、土佐湾、日向灘沖へと続く海底の溝状の地形のことです。
「トラフ」とは、海底にある細長いくぼみのことです。
この南海トラフでは、海側のフィリピン海プレートが、陸側のプレートの下へ少しずつ沈み込んでいます。
そのとき、プレート同士が強く固着し、陸側のプレートが引きずり込まれます。
そして限界を超えると、陸側のプレートが跳ね上がり、大きな地震が発生します。
これが、南海トラフ沿いで繰り返されてきた地震の基本的な仕組みです。
つまり、
南海トラフ=地形・場所の名前
南海トラフ地震=その場所で起きる地震の総称
です。
ここまでは、地震が起きる「場所」と「仕組み」の話です。
2|南海トラフ地震とは何か?
南海トラフ地震とは、南海トラフ沿いで発生する大規模地震の総称です。
過去にも、南海トラフ沿いでは大きな地震が繰り返し発生してきました。
たとえば、
昭和東南海地震
昭和南海地震
安政東海地震
安政南海地震
宝永地震
などが知られています。
ただし、毎回まったく同じ場所が、同じ規模で、同じタイミングで動くわけではありません。
東側だけが動くこともあります。
西側だけが動くこともあります。
時間差で発生することもあります。
広い範囲が連動して動くこともあります。
つまり、南海トラフ地震といっても、発生のしかたには幅があります。
ここを押さえておかないと、
「南海トラフ地震=必ず最大クラスの巨大地震」
と誤解してしまいます。
そうではありません。
南海トラフ地震は、南海トラフ沿いで起きる地震の総称です。
その中で、最大クラスとして想定されているものが、次に説明する「南海トラフ巨大地震」です。
3|南海トラフ巨大地震とは何か?
では、よく聞く「南海トラフ巨大地震」とは何でしょうか。
これは、単に南海トラフで起きる地震すべてを指す言葉ではありません。
南海トラフ巨大地震とは、政府が防災対策を考えるために想定している、科学的に考えられる最大クラスの南海トラフ地震のことです。
ここが重要です。
南海トラフ地震には、いくつかの発生パターンがあります。
その中でも、南海トラフ巨大地震は、南海トラフ沿いの広い震源域が連動し、非常に大きな揺れと津波をもたらす最大クラスのシナリオとして扱われます。
つまり、
南海トラフ巨大地震=最大クラスの被害を想定した南海トラフ地震
です。
ここで大切なのは、
「南海トラフ地震」と聞いたら、すべてが巨大地震という意味ではない。
しかし、最大クラスとして想定されている南海トラフ巨大地震は、広域に甚大な被害をもたらす可能性がある。
ということです。
4|なぜ「巨大」と呼ばれるのか?
この記事で一番整理したいのは、ここです。
南海トラフ巨大地震が「巨大」と呼ばれる理由は、単にマグニチュードが大きいからだけではありません。
もちろん、マグニチュード9クラスの地震が想定されていることは大きな理由です。
しかし、本当に重要なのは、
被害の範囲が広いこと
揺れ・津波・ライフライン停止が重なること
社会全体の機能が広域で止まる可能性があること
です。
南海トラフ巨大地震が「巨大」と呼ばれる理由を、もう少し分けて見ていきます。
5|理由① 地震の規模が大きい
南海トラフ巨大地震では、マグニチュード9クラスの地震が想定されています。
マグニチュードは、地震そのもののエネルギーの大きさを表す数字です。
数字が少し違うだけでも、地震のエネルギーは大きく変わります。
マグニチュード9クラスになると、震源に近い地域だけでなく、かなり広い範囲で強い揺れが発生する可能性があります。
そのため、太平洋沿岸だけではなく、内陸部や瀬戸内側でも揺れへの備えが必要になります。
6|理由② 震源域が広い
南海トラフは、静岡沖から九州沖まで続く広い領域です。
この広い範囲の一部だけが動く場合もあります。
しかし、複数の領域が連動して動くと、被害の範囲は一気に広がります。
これが、通常の局地的な地震との大きな違いです。
ひとつの町だけの災害ではありません。
ひとつの県だけの災害でもありません。
東海、近畿、四国、九州の広い範囲に影響が及ぶ可能性があります。
つまり、南海トラフ巨大地震は、
広い震源域が連動する可能性を考えた地震
なのです。
7|理由③ 津波の影響が広い
南海トラフ巨大地震で大きく警戒されているものの一つが津波です。
特に、太平洋に面した地域では、短時間で大きな津波が到達する可能性があります。
高知県、徳島県、和歌山県、三重県、静岡県、宮崎県などでは、津波避難が非常に重要になります。
津波は、地震の揺れがおさまってから考えるものではありません。
強い揺れや長い揺れを感じたら、すぐに高い場所へ避難する必要があります。
そして、津波の怖さは高さだけではありません。
到達時間。
浸水範囲。
避難できる時間。
夜間や雨天時の避難。
高齢者や障害のある人の避難。
道路の渋滞。
避難所の不足。
こうした要素が重なることで、被害は大きくなります。
南海トラフ巨大地震が「巨大」と呼ばれる理由には、こうした津波災害の広がりも含まれています。
8|理由④ 被害が「広域災害」になる
南海トラフ巨大地震の本当の難しさは、ここです。
それは、
被害が広すぎる
ということです。
地震そのものが大きい。
津波の範囲も広い。
揺れの範囲も広い。
被災する自治体の数も多い。
影響を受ける企業や施設も多い。
このような災害では、近隣自治体や隣県からすぐに助けが来るとは限りません。
なぜなら、助ける側も被災している可能性があるからです。
道路が止まる。
港が使えない。
燃料が届かない。
物流が止まる。
通信がつながりにくくなる。
電気・水道・ガスが止まる。
医療も介護も行政も企業も、同時にダメージを受ける。
これが、南海トラフ巨大地震を「巨大」と考えるべき本当の理由です。
単なる大きな地震ではありません。
社会全体の機能が、広い範囲で止まる可能性がある地震
だから、巨大地震なのです。
9|確率は何を示しているのか?
ここで、確率の話に戻ります。
よく言われる、
「30年以内に70〜80%」
「80%程度」
「60〜90%程度以上」
「20〜50%」
という数字は、基本的に、
南海トラフ沿いで発生するマグニチュード8〜9クラスの地震の長期評価
として示されているものです。
ここで注意したいのは、この確率が、
南海トラフ巨大地震だけをピンポイントで予測している数字ではない
という点です。
つまり、
「30年以内に70〜80%」
=「最大クラスの南海トラフ巨大地震が必ずその確率で起きる」
という単純な意味ではありません。
南海トラフ沿いで発生する大規模地震のリスクを、長期的に評価した数字です。
確率の詳しい考え方については、こちらの記事で整理しています。
▶ 南海トラフ地震の確率はなぜ変わるのか?「60〜90%程度以上」と「20〜50%」の違いを整理する
この記事では、確率については次の点だけ押さえておきます。
30年以内の確率であって、来年の確率ではない。
確定予測ではなく、長期的なリスク評価である。
確率が低く見える評価があっても、起こりうるリスクは消えない。
確率は、未来を言い当てるための数字ではありません。
備えを始めるための判断材料です。
10|なぜ確率に幅があるのか?
地震の発生確率に幅があるのは、地震が完全な周期で起きるものではないからです。
南海トラフ地震は、過去に繰り返し発生してきました。
しかし、きっちり100年ごと、150年ごとに、同じ場所で、同じ規模で起きるわけではありません。
震源域の動き方も違います。
東側と西側が同時に動くとは限りません。
時間差で発生することもあります。
過去の記録にも限界があります。
プレートのひずみの蓄積量にも解釈の幅があります。
どのモデルを使うかによって、評価にも違いが出ます。
だからこそ、確率には幅があります。
ここで大切なのは、
「70%だから危ない」
「20%なら安心」
という読み方をしないことです。
確率は、安心するための数字ではありません。
備えを始めるための数字
です。
11|香川県・四国ではどう考えるべきか?
香川県は、太平洋沿岸ではありません。
そのため、高知県や徳島県の太平洋沿岸と比べると、巨大津波の直接的なリスクは低い地域もあります。
しかし、だからといって南海トラフ巨大地震の影響を受けないわけではありません。
香川県で考えるべきことは、津波だけではありません。
強い揺れ。
長周期地震動。
ため池の損傷・決壊。
液状化。
停電。
断水。
通信障害。
道路・橋・港湾の機能低下。
物流停止。
燃料不足。
医療・介護・福祉サービスの停滞。
事業所の人手不足。
取引先の停止。
こうした影響は、十分に考えられます。
つまり、香川県で重要なのは、
「津波が何メートル来るか」
だけではありません。
自分の地域で、何が止まるのか。
自分の家庭で、何が困るのか。
自分の会社で、どの業務が止まるのか。
自分の施設で、誰を守る必要があるのか。
ここを考えることです。
南海トラフ巨大地震への備えは、太平洋沿岸だけの話ではありません。
瀬戸内側でも、生活継続、事業継続、介護継続、地域継続の問題として考える必要があります。
12|「巨大」の本質は、想定外ではなく“広域同時被災”
東日本大震災が、それまでの防災に突きつけた言葉があります。
それが、
想定外
です。
しかし、南海トラフ巨大地震で本当に考えるべきことは、
「想定外のことが起きるかもしれない」
という漠然とした不安だけではありません。
むしろ、すでに見えている大きな課題があります。
それは、
広域同時被災
です。
自分の町だけが被災するのではない。
隣町も被災している。
隣県も被災している。
支援に来る側の地域も被災している。
物流の出発地も、道路も、港も、燃料供給も影響を受けている。
これが、南海トラフ巨大地震の難しさです。
災害時は、助け合いが大切です。
しかし、広域災害では、
「助けに来る人も被災している」
「支援物資を運ぶ道も止まっている」
「外部専門家もすぐには来られない」
という状況が起こりえます。
だからこそ、家庭でも、事業所でも、施設でも、
最初の数日をどう乗り切るか
外部支援が遅れる前提でどう動くか
最低限の生活・業務をどう続けるか
を考える必要があります。
13|確率より大切なのは、自分ごとに落とすこと
南海トラフ地震の確率が何%か。
もちろん、それは大切な情報です。
しかし、防災で本当に重要なのは、その数字を見て終わることではありません。
自分の家では、何が倒れるのか。
水は何日分あるのか。
トイレは使えるのか。
スマホの充電はどうするのか。
家族と連絡が取れないとき、どこに集まるのか。
職場は何日止まると困るのか。
介護施設では、夜勤帯にどう動くのか。
建設会社では、重機・燃料・人員・通信をどう確保するのか。
ここまで落とし込んで、はじめて確率が行動に変わります。
数字だけでは、人は動けません。
でも、
自分の生活で何が止まるか
が見えると、備えは始められます。
まとめ|南海トラフ巨大地震は、最大クラスの“広域災害シナリオ”
最後に整理します。
南海トラフは、静岡沖から九州沖まで続く海底の溝状地形です。
南海トラフ地震は、その南海トラフ沿いで繰り返し発生してきた大規模地震の総称です。
南海トラフ巨大地震は、科学的に想定される最大クラスの南海トラフ地震であり、広い範囲で強い揺れと津波、そして社会機能の停止をもたらす可能性があるシナリオです。
そして、確率は予言ではありません。
「いつ起きるか」を言い当てる数字ではなく、
備えを始めるためのリスク評価
です。
南海トラフ巨大地震で本当に考えるべきことは、怖がることではありません。
数字に振り回されることでもありません。
自分の地域で何が起きるのか。
自分の家庭で何が止まるのか。
自分の会社で何が続けられなくなるのか。
自分の施設で誰を守る必要があるのか。
そこを確認することです。
南海トラフ地震の確率について、さらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
▶ 南海トラフ地震の確率はなぜ変わるのか?「60〜90%程度以上」と「20〜50%」の違いを整理する
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