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📘 特別BCP記事:このカテゴリでは、個人事業主&小さな会社のBCP力説

「会社を守れるのか?」
その心配と向き合う勇気を生むのは、知識と準備だけ。
“作って終わり”ではなく、動けるBCPへ。
その一歩を、私たちが助けます。
── みのる防災
「生き残れ!」社長のための資金管理(経営)BCP
第5回 黒字倒産はなぜ起きるのか?
―利益と現金は別物だった
はじめに
会社が倒産すると聞くと、
多くの人は、
「赤字だったのだろう」
と思います。
しかし現実には、
利益が出ているのに倒産する会社
があります。
いわゆる、
黒字倒産
です。
初めて聞く人は、
「黒字なのに倒産するなんてあり得るのか」
と思うかもしれません。
しかし、
実はこれは珍しい話ではありません。
私は防災やBCPを学ぶ中で、
黒字倒産という現象は、
企業における
資金管理BCPの失敗
とも言えるのではないかと考えています。
なぜなら、
会社を止めるのは、
利益不足ではなく、
現金不足だからです。
利益と現金は違う
まず最初に理解しなければならないことがあります。
それは、
利益と現金は別物
ということです。
例えば、
100万円の商品を販売したとします。
帳簿上では、
売上100万円です。
利益も出ています。
しかし、
その代金の入金が60日後だったらどうでしょうか。
帳簿上は黒字です。
しかし、
今すぐ使える現金はありません。
会社は、
帳簿ではなく、
銀行口座の残高で動いています。
給料も、
仕入れも、
家賃も、
税金も、
現金で支払います。
つまり、
利益があっても、
現金がなければ会社は止まるのです。
売掛金は「未来のお金」
中小企業でよく起きるのが、
売掛金の問題です。
例えば、
今月1,000万円の工事を完成させた。
しかし、
入金は2か月後。
この時、
社長の頭の中では、
「1,000万円売れた」
となります。
しかし実際には、
まだお金は入っていません。
売掛金とは、
未来に入る予定のお金です。
今使えるお金ではありません。
もし取引先が倒産すれば、
回収できない可能性もあります。
つまり、
売掛金は資産ですが、
現金ではないのです。
売上が増えるほど苦しくなることもある
ここが経営の難しいところです。
一般的には、
売上が増えることは良いことです。
しかし、
急成長する会社ほど、
資金繰りに苦しむことがあります。
例えば、
受注が増えると、
材料を多く仕入れます。
人も増やします。
外注費も増えます。
つまり、
先に支払うお金が増える。
しかし、
入金は後です。
その結果、
利益は出ているのに、
現金が足りなくなる。
これが、
成長型の黒字倒産です。
在庫も現金を眠らせる
もう一つ見落とされがちなのが、
在庫です。
在庫は商品です。
しかし、
会社にとっては、
現金が形を変えたものでもあります。
例えば、
1,000万円分の在庫を抱えている。
その商品が売れなければ、
1,000万円の現金は戻ってきません。
つまり、
在庫が増えるほど、
会社の現金は固定されます。
景気が悪化した時、
在庫は資産ではなく、
重荷になることもあります。
回収サイトと支払いサイト
黒字倒産を理解する上で、
非常に重要なのが、
回収サイトと支払いサイトです。
例えば、
売掛金回収は90日後。
仕入れ支払いは30日後。
この場合、
会社は60日間、
自分のお金で立て替えることになります。
受注が増えれば増えるほど、
必要な運転資金も増えます。
つまり、
利益が出ていても、
現金が足りなくなるのです。
手形文化が残すリスク
以前に比べると減りましたが、
建設業や一部業界では、
今でも手形が使われています。
手形は、
将来支払う約束です。
つまり、
現金ではありません。
満期まで待たなければならない。
途中で資金が必要になれば、
割引を利用する。
結果として、
資金繰りが苦しくなることがあります。
近年は電子記録債権への移行も進んでいますが、
本質は同じです。
現金化まで時間がかかる資産には、
資金繰りリスクが存在します。
ファクタリングは万能ではない
最近は、
ファクタリングという言葉もよく聞きます。
売掛金を早く現金化する仕組みです。
確かに、
急な資金需要には有効です。
しかし、
手数料が発生します。
頻繁に利用すると、
利益を圧迫します。
つまり、
根本的な解決策ではありません。
本来は、
資金繰りを改善するための補助的な手段です。
黒字倒産は「現金不足災害」
私は黒字倒産を、
一種の
現金不足災害
だと思っています。
建物は無事。
社員もいる。
仕事もある。
利益も出ている。
それなのに会社が止まる。
これは、
災害によって道路が寸断され、
支援物資が届かない状況と似ています。
会社にとっての支援物資は、
現金です。
だからこそ、
資金管理BCPでは、
利益よりも先に、
キャッシュフローを見る必要があります。
第一部のまとめ
このシリーズでは、
ここまで
-
資金管理BCPとは何か
-
インフレ型BCP
-
価格転嫁
-
キャッシュショート
-
黒字倒産
を見てきました。
一見すると、
別々の話に見えるかもしれません。
しかし、
全てはつながっています。
価格転嫁できない。
↓
利益率が下がる。
↓
現金が減る。
↓
キャッシュショートが起きる。
↓
黒字倒産する。
つまり、
企業を止める原因は、
売上不足だけではありません。
現金不足もまた、
企業にとっての災害なのです。
次回予告
第一部では、
「企業がなぜ止まるのか」
を整理してきました。
では、
企業はどうやって生き残ればよいのでしょうか。
次回から始まる第二部では、
自己資金、
共済、
保証協会、
日本政策金融公庫、
BCP融資など、
企業を守るための
資金レジリエンス
について考えていきます。
まず生き残る。
成長はその後に考える。
それが、
このシリーズを貫くテーマです。
このシリーズの背景にある考え方
「生き残れ!」社長のための資金管理(経営)BCP編は、
防災、BCP(事業継続計画)、危機管理、投資、統計学、システム工学など、さまざまな分野の考え方を参考にしながら、
「小さな会社や個人事業が、どうすれば長く生き残れるのか?」
を考えるシリーズです。
ここで扱う内容は精神論ではありません。
むしろ、
-
固定費
-
資金繰り
-
借入
-
試行回数
-
レジリエンス
-
冗長性
-
単一障害点
-
連続災害
といった、
「現実の構造」をどう考えるか
という視点に近いものです。
① レジリエンス(Resilience)
「壊れない」ことではなく、
-
壊れても戻れる
-
小さくしても続けられる
-
縮小しても生き残れる
という考え方です。
近年のBCPや危機管理では、
「想定外をゼロにする」
よりも、
継続可能性
が重視されています。
② 単一障害点(Single Point of Failure)
そこが止まると全体が止まる場所を意味します。
小さな会社では、
-
社長自身
-
資金繰り
-
主要設備
-
特定取引先
などが単一障害点になりやすく、
社長が倒れるだけで会社が止まることもあります。
③ 冗長性(Redundancy)
一見すると無駄に見える余裕です。
例えば、
-
手元資金
-
複数の収入源
-
副業
-
代替手段
など。
効率だけを追い求めると、逆に壊れやすくなります。
④ 試行回数と期待値
投資や統計の世界では、
「退場しないこと」
が最も重要です。
一度の勝負で人生を賭けるより、
小さく続けながら試行回数を維持する方が、長期では有利になりやすいと考えられています。
⑤ ブラックスワン理論
予測困難でありながら、
大きな影響を与える事象を指します。
-
巨大災害
-
感染症
-
急激な物価高
-
戦争
-
供給停止
重要なのは、
予測することより、
耐えられる構造を作ること
です。
⑥ オールハザード(All Hazards)
危機を個別ではなく、
横断的に考える方法です。
地震も、
台風も、
人手不足も、
物価高も、
会社にとっては「事業継続を脅かす危機」です。
⑦ アンチフラジャイル
混乱やストレスによって、
逆に強くなる構造です。
重要なのは、
-
小さく失敗する
-
学習する
-
修正する
-
再挑戦する
ことです。
⑧ リンドィ効果(Lindy Effect)
長く続いているものほど、
今後も長く続く可能性が高いという考え方です。
このシリーズでは、
「急成長」
よりも、
20年続く会社
を重視しています。
⑨ バーベル戦略
大部分は安全に、
一部だけ挑戦する考え方です。
例えば、
安全側:
-
手元資金
-
固定顧客
-
定期収入
挑戦側:
-
新規事業
-
SNS
-
AI活用
全額勝負を避ける発想です。
⑩ システム思考
個別の問題ではなく、
構造を見る考え方です。
売上減少の背景には、
利益率や価格転嫁、人材不足など、
複数の要因が絡み合っていることがあります。
⑪ ボトルネック理論(TOC)
会社は最も弱い部分によって制限されます。
-
資金
-
人材
-
営業
-
設備
どこか一つが詰まるだけで全体が止まります。
⑫ キャッシュ・イズ・キング
利益より先に、
現金。
売上より先に、
現金。
黒字より先に、
現金。
資金管理BCPの中心にある考え方です。
⑬ マージン・オブ・セーフティ(安全余裕)
安全余裕とは、
余力そのものです。
防災では、
-
備蓄
-
非常電源
経営では、
-
手元資金
-
予備設備
-
余剰人員
などが該当します。
⑭ セカンドオーダー思考
目先ではなく、
その先を見る考え方です。
今日の利益だけでなく、
1年後、5年後にどうなるかを考えます。
⑮ 生態学的レジリエンス
森が一本の大木だけでは成立しないように、
会社も一つの事業だけでは脆くなります。
-
主力事業
-
副収入
-
地域ネットワーク
-
人とのつながり
があることで、組織は強くなります。
このシリーズが目指すもの
このシリーズが目指しているのは、
「絶対に成功する方法」
ではありません。
災害。
インフレ。
取引先倒産。
人手不足。
病気。
想定外の危機が続く時代に、
「どうすれば退場せずに生き残れるか」
を考えることです。
防災も、
BCPも、
危機管理も、
投資も、
本質的には同じ問いに向かっています。
まず生き残る。
成長は、その後に考える。
それが、
「生き残れ!」社長のための資金管理(経営)BCP編を貫くテーマです。