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今回のテーマ!
研究追加記事
真・72時間の壁―歴史が教える「72時間の先」
戦争・巨大災害・復旧・復興の時間軸を考える
はじめに
前回の記事では、
SRT(Self-Reliance Time)
=自立継続時間
という考え方を紹介しました。
72時間はゴールではなく、
生活継続や事業継続のスタートラインである。
という考え方です。
しかし、本当に私たちは「72時間の先」を想像できているのでしょうか。
防災の世界では、
72時間
3日間
という数字がよく使われます。
確かに重要です。
しかし歴史を振り返ると、
社会が元の姿に戻るまでには、
もっと長い時間が必要でした。
今回は、
第二次世界大戦、
阪神・淡路大震災、
東日本大震災、
能登半島地震などを振り返りながら、
「72時間の先」
にある復旧・復興の時間軸を考えてみます。
72時間は何の時間なのか?
まず整理しておきたいことがあります。
72時間とは、
本来、
人命救助の時間です。
倒壊家屋からの救出。
重傷者の搬送。
医療対応。
緊急避難。
つまり、
「命を守る時間」
です。
しかし、
被災者の生活や企業活動は、
72時間で終わりません。
むしろ、
72時間を過ぎた後から、
本当の長期戦が始まります。
第二次世界大戦後の日本
1945年。
終戦。
日本各地の都市は空襲によって大きな被害を受けました。
住まいを失った人々。
深刻な食料不足。
物資不足。
インフラの破壊。
配給だけでは生活できず、
闇市や買い出し列車が社会現象となりました。
住宅不足も長く続きます。
そして、
1956年。
経済白書は、
「もはや戦後ではない」
という有名な言葉を残しました。
終戦から約11年後です。
もちろん、
戦争と災害は同じではありません。
しかし、
社会基盤が広範囲に失われた場合、
復旧には年単位、
復興には10年単位の時間が必要になることを示しています。
阪神・淡路大震災
1995年。
発災直後の救助活動は72時間が重要でした。
しかし、
その後も、
住宅再建
インフラ整備
地域再生
は長く続きました。
復興計画は約10年規模で進められています。
72時間で終わった災害ではありません。
東日本大震災
2011年。
巨大津波。
原子力災害。
広域被災。
道路寸断。
燃料不足。
物流停止。
孤立地域の発生。
発災直後は、
救援物資が届くまで数日以上かかった地域もありました。
そして現在もなお、
復興事業は続いています。
72時間は、
15年以上続く復興の入口に過ぎませんでした。
能登半島地震
2024年。
発災直後の救助活動は数日間で実施されました。
しかし、
断水。
住宅問題。
地域経済。
人口流出。
生活再建。
これらの課題は現在も続いています。
復旧と復興は別物であることを、
私たちに改めて教えてくれました。
災害には複数の時間軸が存在する
歴史を振り返ると、
災害には複数の時間軸があります。
フェーズ1
0~72時間
救命・救助
フェーズ2
72時間~2週間
生活継続
水
食料
トイレ
電源
通信
フェーズ3
2週間~1か月
避難所生活
仮設生活準備
支援体制の本格化
フェーズ4
1か月~1年
住宅再建
インフラ復旧
事業再開
地域活動の再開
フェーズ5
1年~10年以上
復興
コミュニティ再生
産業再建
経済回復
文化や地域の再生
つまり、
72時間は、
災害全体から見れば、
最初の入り口に過ぎないのです。
南海トラフ地震では何が起きるのか?
南海トラフ地震は、
東日本大震災以上に広域災害となる可能性があります。
静岡から九州にかけての広範囲が同時被災。
高速道路。
港湾。
空港。
燃料基地。
物流拠点。
通信設備。
これらが同時に被災する可能性があります。
もちろん、
日本全国や世界各国からの支援も期待できます。
しかし、
被災地域が広すぎるため、
地域によって復旧速度に大きな差が生じる可能性があります。
「72時間後には元に戻る」は危険な前提
本記事は、
「南海トラフ地震では必ず1年~3年復旧しない」
と主張するものではありません。
しかし、
歴史を振り返れば、
住宅再建。
地域再生。
産業復旧。
コミュニティ復興。
に年単位の時間が必要だった事例は数多く存在します。
つまり、
「72時間後には元に戻る」
という前提よりも、
「長期間の補給空白や不便が続く可能性がある」
という前提で備える方が、
リスクマネジメントとしては合理的です。
SRT(自立継続時間)が意味するもの
ここで前回紹介した
SRT(Self-Reliance Time)
という考え方が重要になります。
SRTは、
単なる備蓄日数ではありません。
家庭や企業が、
支援が届くまで、
復旧が進むまで、
自ら時間を稼ぐ能力です。
72時間
↓
7日
↓
14日
↓
1か月
↓
地域復旧
↓
本格復興
この長い時間軸を理解し、
段階的に備えることが、
南海トラフ時代の防災やBCPにつながります。
結び
72時間は壁ではありません。
72時間はスタートラインです。
歴史を振り返れば、
復旧には数か月、
復興には数年、
場合によっては10年以上の時間が必要でした。
だからこそ私たちは、
「72時間を生き延びる」
だけではなく、
「72時間の先を生き抜く」
ための備えを考える必要があります。
未来を予言することはできません。
しかし、
歴史から学び、
外れ値が起きても生き残れる準備をすることはできます。
それが、
SRT(自立継続時間)という考え方の出発点です。
備えは愛だ。
出典・参考
- 内閣府 防災情報のページ
- 復興庁「東日本大震災からの復興」
- 国土交通省 災害対応・物流復旧資料
- 阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
- 能登半島地震関連資料
- 昭和31年版 経済白書「もはや戦後ではない」
- FEMA(米国連邦緊急事態管理庁)
- UNDRR(国連防災機関)
- ISO22301(事業継続マネジメント)
- ISO22316(組織レジリエンス)
72時間の壁 研究シリーズ

【72時間の壁シリーズ】

【保存版】72時間の壁とは?根拠は“防災基本計画”と阪神・淡路データ|防災士が再定義(2026.1更新)
【72時間の壁シリーズ】
【72時間の壁を、学術的に解説した記事と分析した全10記事】2025年度版
⑩第10記事【第10回】企業版72時間──RTO/RPOとBCPがつながる瞬間 家庭の72時間と、企業の“再稼働時間”は同じ線上にある
⑨第9記事【第9回】「実感で見た72時間」──東日本・熊本・トルコの実証から考える“自立の限界”データと現場が示した「72時間を超える災害」のリアル
⑧第8記事【第8回】世界は72時間を超えている──FEMA・NZ・フィリピン比較 各国キャンペーンとISO22301が示す「3日では足りない」理由
⑦第7記事:72時間の壁の歴史──阪神淡路から熊本・胆振まで なぜ“3日神話”はここまで広まったのかー「知っておくべき歴史」
⑥第6記事: 「72時間の壁」は神話か、それとも今も有効か?──歴史・データ・国際比較から再検証
⑤第5記事:「真・72時間の壁(SRT=Self-Reliance Time)特集」7〜14日を現実にするチェックリスト(家庭版)
④-⑤ 研究追加記事:真・72時間の壁―歴史が教える「72時間の先」戦争・巨大災害・復旧・復興の時間軸を考える
④第4記事:真・72時間の壁──南海トラフ時代のSRT(自立継続時間)を提案する
③第3記事:真・「72時間の壁」 【序章】再調査と再定義──「72時間」はもう終わった?
②第2記事:「備える」とは?──“72時間の壁”が教えてくれた備えの本質
①第1記事:「72時間の壁」とは、災害後の生死を分ける“タイムリミット”のこと。なぜ3日間なのか?その根拠を阪神・淡路の教訓とともに、防災士が解説します。
👆おすすめは、この第1記事から読んでください。背景を理解できます。👆
【防災グッズ&防災リュックを備えるための「72時間」】
④第4記事:🧰避難にはスケジュールがあるって知ってました?~防災グッズを揃える手順は3つの避難ターンでそろえよう
③第3記事:🧰【1日~1.5日対応】36時間用・防災リュック「防災リュックを持って、本当に逃げられるだろうか?」
②第2記事:✔ 最低限そろえたい「3日間サバイバル」基本セットとは?その理由と使い方
①第1記事:👜 3人家族の防災対策・具体例~タイムスケジュールで備える!「その瞬間」から72時間(3日間)を乗り切るために~
参考記事-海外との比較
第3回:日本とアメリカの防災はなぜ違うのか?―文化的背景のさらに深い視点:農耕と狩猟の記憶
https://minoru-bousai.blogspot.com/2025/09/blog-post_23.html
第2回:日本とアメリカの防災はなぜ違うのか?──歴史・地理・文化的背景から考える
https://minoru-bousai.blogspot.com/2025/09/blog-post_5.html
日本とアメリカの防災はなぜ違うのか?──歴史・地理・文化的背景から考える
https://minoru-bousai.blogspot.com/2025/09/blog-post_4.html
日本とフィリピンの防災対応の違い!はじめに──自己紹介
https://minoru-bousai.blogspot.com/2025/08/blog-post.html
日本とタイの防災──地震発生時の行動を比較する
https://minoru-bousai.blogspot.com/2025/09/blog-post.html
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